第八十四話 手抜き工事
中華人民共和国は、土地の私有が出来ない”共産主義”国家のはずなのに、現実には盛んに土地の売買がされています。
……どうして?
実は、土地私有権ではなく、99年間の土地租借権(使用権)の売買がされているのです。だから、土地の持ち主は、あくまでも”国家”。地上に建物を建てて使用する権利を民間に販売しているだけなのです。
だから、ある日突然、地元の政府から、『この地域の開発をするから、あなたに貸している土地を返してね。』と言われたら、それでお終い。
最近は、国民の私有財産権を認めるようになってきましたが、土地開発をめぐるトラブルが、中国全土で多発しています。
さて、中国でマンションやオフィスを購入する場合、厄介なのが、”内装”。
中国ではスケルトン販売と言って、内装をせず、基礎配管だけをした状態で購入者に建屋を引き渡すのが一般的で、購入者が自分で業者を決めて、日常に使える状態まで内装をしなければなりません。
したがって、分譲マンションなどは、外観は同じような感じでも、室内に入ると、間取りや内装が部屋ごとに違う!まさに自分だけの”城”なのです。
もしも大手メーカーに内装工事を依頼したとしても、実際に施工するのは、大手メーカーの下請け業者に雇われた出稼ぎ労働者です。彼らは初等教育も満足に受けていないことも多く、また、一般的なマナーにちょっと欠けていることもあるので、内装期間中は、部屋の購入者が毎日工事現場に通って、大工さん達がきちんと取り決めた材料を使って、手抜きをしていないかどうか、ずっと見張らなければなりません。また、時折、大工さん達をねぎらうため、美味しい食べ物やビールなどの差し入れが必要。
日本では考えられないことですが、中国では、内装をする大工さん達は、家族を連れて施工をしている部屋に工事期間中ずっと泊まり込む(勝手に住み着く、ともいう)ので、大事な物件が必要以上に汚されないように施工主が気を配る必要があります。
私の上海勤務時代、中国人の同僚が分譲マンションの部屋を購入しました。
購入後、彼は有休休暇をフルに使い、週に3日くらい半休を取って、工事現場にせっせと通っていました。彼が行かれない日は、彼の奥さんやご両親が代わりに現場に通っていました。
「胖姐さん、ホント疲れちゃうよ。家を買ったら、こんなに面倒だと思わなかった。」
「何がそんなに大変なの?」
「だってさぁ、僕が大金をはたいて買った輸入フローリング材の上で、内装工の一家がプロパンガスボンベを持ち込んで炊事しているんだよ。なんか大工さんの子供が、僕の家の中で勝手に走り回っているし。どっちが住人なのか分かんないよ。シンナーみたいな揮発成分が部屋中に充満しているのに、火のついたタバコの吸い殻を平気で投げ捨てるし、せっかくの床材にタバコの焼け焦げが思いっきりついちゃってさぁ……。このままじゃ、新しい家に住む前に火事で燃えちゃいそうだよ。」(;´д`)トホホ
「へぇ……。大変なんだね……。」
「この前なんか、内装に使ったセメントが余ったからって言って、下水に流しちゃって……。流したセメントが中で固まっちゃったので、配管を結局交換することになったんだ。今日からまた水回りの内装のやり直しだよ~。ちくしょー(# ゜Д゜)」
時々、中国の手抜き工事に起因する大事故のニュースが日本でも報道されますが、報道されないだけで、手抜き工事に繋がる要素は、実はそこら辺に蔓延しているのです。コワイね~~((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル




