第七十七話 爆買い!
ここ数年で、『爆買い』という言葉がすっかり定着しました。
中国の春節(旧正月)になると、日本のTVのニュース番組で、中国人旅行客による爆買いの模様を報道するのが定番となっています。
中国には、増値税(VAT)という消費税のような税金があり、食品や生活必需品以外の物品について、かなり高額の税金がかけられるため、海外で購入したほうが安いということもあります。また、ニセモノが氾濫しているため、ブランド品については海外正規店で購入するほうが、一般的に安心だとされています。
中国人による爆買いは、日本だけでなく、香港やタイ、韓国など他のアジア地域でも話題になっています。
特に、香港では、粉ミルクや医薬品、紙オムツが中国大陸からやってきた転売ヤーによって大量に買い占められて、地元の香港人が入手できなくなってしまう事態が起こり、社会問題となりました。
日本でも粉ミルクや紙オムツをドラッグストアで買いあさる中国人のことが報道されましたよね。
日本の食品メーカーの人にいわせると、『国ごとの食糧事情に合わせて、ミルクの成分を微調整しているので、日本で売っている粉ミルクが、必ずしも中国のお子様の舌に合うわけではないと思うんですがねぇ。』ということなのですが。(;^ω^)
実際、私の中国人同僚が、日本出張時に、息子さんのために粉ミルクを買って帰ったところ、『日本製の粉ミルクは、味が薄くて、まず~~い!』と言われてしまったそうです。(中国では就学年齢くらいまで子供に粉ミルクを飲ませる習慣があります)
それでも、中国では食の安全が保障されていないので、海外に出るチャンスがある中国人は、品質が高くて安全な外国製の粉ミルクを買いまくるのです。
私が、初めて中国人による『爆買い』を見たのは、2010年頃の香港です。
空港内の免税品店アーケードをぶらぶらしていたら、スワロフスキークリスタルショップで、時代遅れの皮ジャンを着た中国人のおじさん2人組が、北方訛り丸出しの普通話(中国語)で、
「ちょっと姉ちゃん、ここから(とショーケースの端を指さす)、ここまで(とショーケースの逆端を指さす)の製品を全部買うから、さっさと包んで。」
と言っていたのを見たのが最初です。
おかけで、アクセサリーを1つだけしか買わない(……というか買えない)私は、30分ほど会計を待たされてしまいました。くそー。(# ゜Д゜)
その後も、香港のショッピングモールで、爆買いの中国人客に遭遇すること数回……。
レジカウンターに、『それ、一人で着るの?』と言いたくなるような大量の洋服を積み上げて、一枚ずつその場で試着しては、要らない服を散らかしまくる中国人のおじさんとか、家族全員がそれぞれ粉ミルクの大きな缶を抱えて、ドラッグストアのレジに並ぶ中国人一家とか……。(一人当たりの販売個数の制限があったので)
最近は、私のように個人客に対しては、香港人の店員さんが、
「お客様は”これだけしか”お求めにならないのですね。……では、こちらへどうぞ。」
と、爆買い客とは別のレジに案内して下さることが増えました。
マナーに欠ける爆買い客の会計待ちでイライラすることがなくて、とてもありがたいのですが、店員さんに、『これだけ?』と言われると、何だか地味に傷つくんですよね……。
香港で買い物をするたびに、日本の経済力低下をまざまざと実感させられてしまうのでした。
最近、都内のデパートに中国系の店員さんが増えました。特に化粧品のカウンター。
日本にいるのに、なぜか中国語で応対されてしまうこともあります。(私は日本人だぁ~!)
今、日本人はデパートで物を買わなくなっているんですね。




