第七十六話 麗しのカレンダーガール
かつて私が中国・広東省の工場に長期出張していた時のことです。
工場というと、何となく男性がたくさん働いているイメージがありますが、私が出張した工場は、8割近くが女性社員でした。
製造部長、課長、係長、ライン長もすべて女性。もちろんライン作業者も女性。
若い作業者がうっかりミスをしてしまい、鬼軍曹みたいなライン長に怒鳴りつけられている光景は、まるで女子校の体育会系部活動で、おっかない三年生に叱られている一年生のようです。
さて、当時、そんな”女の城”の名物行事が一つありました。
『カレンダーガール選抜』です。(現在は廃止)
年末に会社が得意先に配布する卓上カレンダーに載せる12人のモデルを選び出すのです。
特に、カレンダーの1月と12月はトップとトリになるので、社内でも一、二を争う美女が選ばれました。
毎年8月頃に現場のライン長に『これは!』という部下を推薦してもらい、男性社員が隠密に一次審査したあと、管理職や日本人男性社員がさらに二次審査を行ない、10月頃までにファイナリスト12人を選びだします。
ちなみに、一度選ばれた人は二度と選ばれません。(もっとも、ほとんどの社員がお年頃になると寿退社してしまうので、二度選ばれるくらい社歴が長くなりようがない)
また、選ばれる女性の所属部署が偏らないように気を遣っているそうです。
選抜時期になると、なぜか男性社員のほうがソワソワしています。
やっぱり自分と同じ部署の同僚を選んでもらいたいのかな~~?
一次審査を通過した人のリストが上がってくると、今度は管理職や日本人男性社員が、それを見て、ちょっぴりソワソワ。
同僚の日本人男性社員によると、『女性の目から見て可愛い娘と、男性の目から見て可愛い娘は絶対に違うと思う。胖姐さんには悪いけど、女性は美人を選ばないことがあるよね!それに、中国人が選ぶ女性は、日本人には、必ずしも美人であるとは限らない。お得意先様は日系企業なのだから、日本人受けする女性を選ぶようにしている。』とのことです。(;^ω^)
かつては、上記の理由から、男性社員達が、現場から推薦されてきた女性にダメ出しをすることもあったそうです。
カレンダーガールに推薦されるのは、ほとんどが現場のライン作業者なので、勤務中はずっと下を向いて組立作業をしており、そばを通っても、なかなか顔を確認することが出来ません。隠密に調査をしている関係上、作業を中断させて顔を上げさせるわけにはいかず、毎年、一次審査にはそれなりに時間がかかったようです。
最終的に選ばれた12人には、会社からカレンダーガールに選ばれたことを通知して承諾をもらい、11月頃に写真撮影を行います。
外部からプロのカメラマンとメイクさん、衣装さんを招聘して、一日がかりで社内で撮影を行なうそうです。(当然、モデルさんは出勤扱い)
そして、結婚写真と同じように、欠点をコンピューターグラフィックで修正しまくり、12月上旬には、単なる素人とは思えない12人のグラビアアイドルが微笑む卓上カレンダーが完成!
このカレンダーは、客先(特に男性社員)から評判が良かったそうで、他社のカレンダーを押しのけて、翌年、机の上に飾られる率が高かったとききました。
ある年、私と親しくしていた中国人女性社員が、カレンダーガールに選ばれました。
彼女は社内の人気者でしたが、美人というよりは可愛いタイプの女の子だったので、さぞかしカレンダーも80年代アイドルっぽい感じだろうと思ったのですが、出来上がった写真を見ると、セクシービームがバリバリの大人っぽい仕上がりになっていて、しかもそれが彼女の新たな魅力を引き出していたので、ちょっとびっくりしました。
やっぱりプロのカメラマンの目の付け所は違うんだね~~。(◎_◎;)




