第七十二話 コケコッコー!
中国では、急激に都市の交通網が整備されています。
私が中国に暮らしていた1990年代は、北京で地下鉄が2路線、上海でも地下鉄が2路線しかなかったのですが、現在では北京で15路線、上海では16路線も走っています。
今では営業路線の合計キロ数が世界一長いのは、上海の地下鉄と言われています。
今でこそ中国国内の地下鉄の切符は、磁気カードかトークン(プラスチック製コイン型乗車券)を自動券売機から購入する形式になりましたが、1990年代の北京では、駅の切符売り場の窓口で、行先を告げて、薄紙の切れ端のようなペラペラの切符を購入しなければなりませんでした。
そして改札で、駅員にその切符を力任せに破り取られてしまうので、改札を通ると、自分の手元には何も残らない!あらら(;^ω^)
アメリカで2000年に起きた同時多発テロ以降、中国国内でも過激派組織によるテロを警戒して、新幹線や地下鉄に乗る時には、空港と同じように、手荷物検査を受けなければならなくなりました。この検査に時間がかかって結構大変なのです。通勤ラッシュ時間だと検査無しで「行っていいですよ~。」と言ってもらえることもあるのですが、熱心な検査員にあたってしまうと、危険物がないかどうか、いちいちバッグを開けられて、中身をじっくり確認されてしまうのです。それって個人的興味なんじゃ……と思うことが無きにしもあらず。(-_-メ)
1997年のある日、私が『上海駅』から地下鉄1号線に乗ろうとした時のことです。
当時でも、上海は日本と同じように”整列乗車”がルールとなっていましたので、駅のホームのドア位置のところで、おとなしく列に並んで電車が来るのを待っていました。
私の前に並んでいたのは、50代くらいのちょっと田舎っぽい中年男性。手に白いスーパーのビニール袋を提げていました。
……と、その時です。
突然、「コケ?」と鳴き声がしたかと思ったら、ガサガサッと男性が持っていたビニール袋が動き、中から活きたニワトリが顔を出しました。Σ(・□・;)
「……あっ、こらっ!大人しくしてろ。」
「コケ、コッコッコッコッ、コケッ」(意訳:何だよ、気安く触んなよぉ)
「こら、暴れるな。」
「コケッ、コケッ」(意訳:や~め~ろ~よぉ~)
暴れるニワトリの頭を慌ててつかんで、袋の中に押し込めようとする男性。
コケコケ言いながら、男性の手をつついて必死の抵抗をするニワトリ。
私が驚きのあまり、男性のビニール袋から顔を出しているニワトリを、ジーッと言葉もなく見つめていると、何かおかしな雰囲気を感じ取ったのか、駅員さんがツカツカと男性のところまでやってきて、軽く敬礼をして、
「お客様、失礼ですが、生きているニワトリは、電車に持ち込みが出来ません。恐れ入りますが、駅員室まで、ちょっと同行願います。」
と男性の腕をつかんで、どこかに連れていってしまいました……。
現在では駅で手荷物検査があるので、この男性も、ホームにたどり着くまでに、駅員さんにきっと捕まってしまいますね。生物凶器を持っていると大騒ぎになったりして(;^ω^)
日本ではケージに入っていればペットを電車に持ち込み出来るそうですが、ニワトリは果たしてどうなのかな?持ち込み可能??




