第七十一話 漢字と汉字
東アジア圏ならば、どこでも漢字を書けば意思が通じると思っていませんか?
実は、そうではありません。
もちろん、単語の意味が違うということもありますが、漢字を使っていない国というのがあるのです。
たとえば、韓国。過去には漢字を使っていましたが、今ではハングル表記になってしまい、若い世代は漢字を書けなくなっています。
また、漢字を使う国でも、中国と台湾のように、同じ文字でも字体がまったく違っていることがあります。
台湾・香港・澳門で使われている”繁体字”が、昔から使われてきた旧字体で、それを使いやすいように略したのが、現代の日本が使っている”常用漢字”。さらに極限まで文字の旁や扁を省略したのが、中国の使っている”簡体字”となります。
同じ文字でもこんなに違うという例をご紹介します。
(日本語) 千葉県
(繁体字) 千葉縣
(簡体字) 千叶县
なんと、簡体字では、『葉』が『叶』となってしまうのです。
だから、中国人は、セレブで知られる日本の叶姉妹のことを、葉さん姉妹だと思っています。(中国の雑誌にそのように紹介されていました)
それから、中国にしかない漢字というものもあります。(逆に日本にしかない漢字もあります)
私が北京に留学していた時、ある日、教室に入ったら、机の隅に
『肏!』
と落書きされているのを見つけました。(教室の机はたいてい落書きだらけ)(;^ω^)
こんな漢字見たことないぞ……?
不思議に思った私は、中日辞書で調べたのですが、この文字が載っていなかったので、仕方なく、字をノートに書き写して、中国人の同級生(男性)に見せて、意味を訊ねました。
すると彼は、なぜか絶句してしまい、しばらくしてから、言いにくそうに、
「”FUCK ”という意味ですよ。読み方はツァォです。……言っておきますが、女性がこの言葉を使ってはいけません。……あの、この漢字(肏)を構成しているのは、”入る”+”肉”なんですよ。……胖姐さん、そう考えると、意味が分かりますよね。」
……おおーっ(◎_◎;)
目からウロコとはこのことです。表意文字である漢字ってスゴイ!
そおかぁ、肉に入っちゃうのかぁ。どこの肉に何が入るんだろう?(*´з`)
あとで確認したところによると、肏は、「ちくしょう!」とか「クソッ!」というような意味だそうです。スラングなので、当時の辞書には載っていなかったのですね。
漢字もなかなか味わい深く、奥深い文化です。




