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胖姐看中国  作者: 胖姐
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第七話 ねぇねぇ、ATMって何だか知ってる?

銀行口座からお金を下そうとした時、普通はATMを探すと思います。


1990年代の前半には、中国にATMというものはありませんでした。

銀行の支店に行き、残高が記載された通帳(手書きで出入金の記録が書かれている)と出金依頼書を窓口に提出する必要がありました。(金額は中国式の"大写"での記入が必要。漢数字で、壱、弐など、日本が昔使っていたような字体での表記となります)

"秩序を守って順番通りに処理"などという習慣がなかった時代ですから、お金の出し入れだけでも一苦労でした。


1995年以降、ぼちぼち街にATMが現れはじめました。

私が上海に赴任した時、外資系企業ということもあり、給与は時代の最先端を行く"銀行振り込み"でした。

給与支給日に会社の総務課からもらったのは、自分の通帳とキャッシュカード。

さっそくカードを持って、近くのデパート内のATMにお金を下ろしに出かけました。


そうしたら……

ATMの操作を始めたところで、あっという間に私の周りに黒山の人だかりが出来ました。


なんと、当時は、ほとんど一般大衆にはATMというものが何なのか知られておらず、


"何か変な機械を使って珍しいことをやっている人がいるぞ"


と野次馬に囲まれてしまったのです。

私に付いてきてくれたはずの現地の友人(上海出身)は、人垣のはるか遠くに逃げてしまっています。

(友人曰く、『ATMに暗証番号を入力するだろうから、見ちゃ悪いと思って、ちょっと離れたところで待っていた』そうですが)


画面に入力をしようとしても、横から手が伸びてきて、


「なぁなぁ、姉ちゃん、これ何の機械?」

「あんた何してるの?」

「ここ押したらどうなるの?」


ATMを操作する私の腕のすきまにもぐり込んで、画面を凝視するお子さんもいたり、無遠慮な野次馬にモミクチャにされた私は、


「……助けてぇ~~~!!!!」


と思わず日本語で叫んでしまいました。


野次馬している人達に、けっして悪気があるわけではないと知っているのですが、あまりにも怖すぎる……( ノД`)シクシク…


私の叫び声でとんできた現地の友人が何とか私をガードして野次馬を遠ざけてくれて、無事にお金を下すことが出来ました。

そして、その光景を見ていた周りの野次馬から一斉に「おおーっ」と拍手(なぜだ??)


私が下したお金を財布にしまって、急ぎ足でその場を立ち去り、ちょっと離れたところから後ろを振り返ったところ、ATMのカード挿入口に鍵やナイフをむりやり差し込もうとしている輩はいるわ、むちゃくちゃに画面やキーボード(金額はテンキーで入力)を押している輩はいるわ、新品ピカピカのATMは野次馬に悲惨な目に遭わされていました。

(恐らくどこかのボタンを押せば、タダでお金が出てくる機械と認識されたに違いない)


翌日、そのATMには、『故障中』との紙が貼られていたのでした。





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