第六十九話 スイートウェディング
最近、日本は地味婚が主流になっていて、豪華な結婚披露宴を開くカップルは少ないですが、中国は派手婚が一般的です。
しかも費用はすべて新郎負担。
日本と違って、招待客のご祝儀額が低いので、恐らくほとんどが新郎側の費用持ち出しになると思います。
披露宴会場を予約し、式当日の新婦宅への迎えのリムジンや衣装を手配し、招待客へのカードや引き出物を用意し……。もちろん、結婚指輪なども用意しなければなりません。
最近、私の知人の中国人男性が結婚披露宴を開いた時には、式の1年以上前から、膨大なTO DOリストの項目を一つ一つこなしていき、ようやく式を挙げた時にはヘトヘトでした。
そのリストの量は、携帯電話の画面で、端から端まで、最低10回以上のスクロールが必要なほど。
もしも仕事だったら、絶対、途中で、「もう、やってらんねぇ~~(# ゜Д゜)」と色んなものを投げ出して叫んでしまうでしょう。
なんと、TO DOリストの中には、新郎が、披露宴会場のどの席からも新郎新婦がきちんと見えることを事前確認することまで含まれています。
ちなみに、私の知人男性は、披露宴を開く会場の写真と見取り図を見ながら、
「……うーん、この会場は料理が美味しくていいんだけどねぇ……。図面を見せてもらったら、会場に柱が4ヶ所あって、テーブルによっては、柱の陰になっちゃって僕達が見えない席が出来ちゃうんだよね。」(=_=)
と、傍から見たらどうでもいいこと(笑)で悩んでいました。
中国の結婚披露宴に欠かせないのは、新郎新婦をファッションモデルのように撮影した畳一畳分もある大型パネルです。
これは式の半年くらい前に撮影して、一番お気に入りの写真を引き伸ばしてパネルを作り、式当日に会場の入り口に飾るのです。(ちなみに、この写真パネルは、披露宴後、2人の新居に飾られます)
最近は写真館の屋内セットだけでなく、屋外でのロケもある撮影プランが主流なのだとか。
お金持ちは、カメラマンやメイクさんなどの撮影クルーを連れて、結婚写真の海外ロケをするのだそうです。(流行のロケ地は京都や北海道)
中国を中心としたアジア圏でごく一般的なこの結婚写真は、日本では”変身写真”という名称で知られています。プロによるばっちりメイクに豪華ドレス、カメラマンによるアイドルのようなポージング、また、最新コンピューターグラフィック技術を駆使して、欠点を修正しまくった写真は、まさに本人が見ても「これ、誰?」というアメージングな仕上がりです。ハッキリ言ってすごい!
切れ長の一重まぶたの女性に、つけまつげとアイラインを駆使して、アイドルのようなぱっちり二重のお目目にするのなんて常套手段です。(ちょっと浅丘ルリ子っぽい)
2人の甘々な世界を表現したゴージャスな写真集を作り、披露宴の招待客以外に、職場の同僚などにもお披露目を行います。
その際、新婚さんはキャンディやチョコレートの入った赤い小さな袋をみんなに配るのがお約束です。このお菓子の詰め合わせは、披露宴の招待客の引き出物にも使います。
中国語の表現で、独身女性に対して婉曲に結婚予定を訊ねる時に、
「您什么时候发给我喜糖?」(あなたはいつ”引き出物”のキャンディをくれるの?)
という言い方があります。
日本でも派手婚が一般的な名古屋あたりは、結婚式の時に、駄菓子の詰め合わせの袋を、自宅の屋上から近所の子供たちに撒くといいますが、実は中国人は愛知県人と気質が似ているのかもしれませんね。




