第六十五話 中国人女性は化粧をしない
1990年代以前に生まれた中国人女性は、普段、あまり化粧をしません。
一般的な日本人女性は、高校生くらいから徐々に化粧を始めますが、中国人女性は、社会人になっても、ノーメイクの素顔で出勤しています。
彼女達に言わせると、『会社には仕事に来ているんだから、仕事の成果と化粧は関係ないでしょ。』だそうです。
中国人女性は、普段、化粧をめったにしない代わりに、日本人よりも素肌の質感にこだわっているような気がします。化粧品で上からカバーするよりも、漢方のエッセンスを取り入れた食事をして、なるべく内面から肌質を改善しようとしているように思われます。
ノーメイク派が主流なのに、街のショッピングモールやデパートには、日本と同じように化粧品会社のカウンターがたくさん並んでいます。出店メーカーもラインナップも、ほぼ日本と同じです。
恐らく実際に売れているのは基礎化粧品ばかりだと思うのですが、日本と同じようなメイキャップ用の化粧品もちゃんとあります。
たまに日本や香港のメイキャップアーチストさんが販促イベントでデパートにやって来て、顧客のみなさんに化粧方法やちょっとしたコツを教えると、お金のある中国人女性は、化粧の出来映えに目を見張って、即座に、”一式お買い上げ~~♪”。要するに、化粧方法を知らないだけなのです。
1990年代以降に生まれた中国人女性は、海外ドラマやファッション誌などから最新情報を簡単に得られるようになったので、メイク技術がかなり高いと思います。
最近は、上海や北京の街を歩いていても、日本人女性と同じようなメイク、ファッションに身を固めている中国人女性が増えてきたので、一瞬、自分がどこを歩いているのか分からなくなるようなことが増えました。(昔はブルゾンちえみのようなメイクで、一種独特なファッションセンスの服が多かったので、日本と錯覚するようなことはありませんでした。)
化粧品に親しむ層が広がってきたとはいえ、それでも都市部に暮らしている若年層から中年層の女性ばかりです。
地方の工場に勤めているような中国人女性は、若くても、まだまだ化粧品から縁遠いです。
例えば、私が東莞市にある工場で長期研修をしていた頃、工場内で化粧をしていたのは、私一人だけでした。工場で働いている従業員は、女性が8割以上なのに、こんな状態です。
ある日、当時親しくしていた数人の現地同僚女性が、私の宿泊先のホテルに遊びに来てくれたことがありました。
彼女達は、私の部屋の洗面台の上にずらっと並んでいる基礎化粧品のボトルを見ると、すごく驚いた顔で、
「胖姐さん、これって全部化粧品?日本から持ってきたの?」
「うん、そうだよ。」
「こんなにいっぱいあるけれど、胖姐さんは一体何に使っているの?」
……うーん、その無邪気な顔でグサッとくる質問をする若さがニクイね!
苦笑いで化粧品について説明した私に対して、彼女達はさらに、
「ふうーん、日本人は色々大変なんだね。別に化粧しなくても、仕事には関係ないじゃない。私達は気にしないけれど。」
……いやぁー、アナタ達のように若くて肌がピカピカならば、素肌で勝負できるけれど、アタシゃ、もうオバサンだからさぁ。若いって残酷ね(´;ω;`)ウッ…




