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胖姐看中国  作者: 胖姐
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第六話 タイムスリップ!?!?

1994年の2月、冬期休暇を利用して、留学先の北京から広州・香港経由で一時帰国をすることにしました。


本来ならば、北京→成田、または北京→香港→成田行きのフライトに乗ればよいのですが、国際線のため、片道チケット費用が非常に高いのです。そのため、いったん空路で広州に入り、そこから高速フェリーで香港に行き、香港で日本行きの格安航空券を買って戻ることにしました。


当時、広州は治安が非常に悪いと言われており、大きなトランクを抱えての長距離列車移動は盗難にあう危険性があったため、予算が許す範囲で安全策をとったのです。

(まぁ、広州と香港が観光したかったというのもありますが)


広州のホワイトスワンホテル内のチケット売り場で無事にフェリーチケットを購入し、タクシーでフェリーターミナルに向かいました。


ところが…………

フェリーターミナルとは名ばかりの、街はずれの小さな船着き場でした。掘っ建て小屋のようなものがあるだけ。もちろん、イミグレーションカウンター(出入国管理局)なども見当たりません。

乗客はそれなりに待っているのですが、どうみても地元の人ばかりで、外国人は見当たりません。しかも改札(?)も、時刻表もありません。


私が途方に暮れていたところ、紙に手書きで時間と船名を書いた案内板を持った係員が、


「XX時の香港行きに乗る人は~?」


と叫びながらこちらにやってきました。

そのとたん、ワッとばかりに押し合いへし合い我先に係員にチケットを差し出す地元客達。

(当時の中国人には行列する習慣は全くありません。とにかく早いもの勝ち)


あまりの勢いに、私はその中に割って入ることも出来ずに、ぼーぜんとしていました。

その時、運よく他の係員が私のそばを通りかかったのです。


「……あっ、あのー、私は日本人で、XX時の香港行きに乗るのですが?」


おずおずと申し出た私に、その係員はどこか慌てたように、


「え、ええっ!……なぜ外国人がいるの?……おーい、外国人でXX時の香港行きに乗る人いる~?」


と叫びました。(もちろん中国語)

その声に応じて彼のもとに集まったのは、私、私と同行していた友人、欧米系男性のたった3名。

係員は私達の顔をみまわしてから、


「外国人、ちょっとこっち来て。パスポート貸してくれる?」


と、船着き場の片隅に置かれていた木製の小さな机の上に我々のパスポートを並べて、机の引き出しからゴム印を出し、ポンポンポンと軽くハンコを捺して、


「はい、終わり。もう船に乗っていいよ。」


と一言。

そして、その係員の声がかかるのを待っていたかのように、セーラー服を着たフェリーの乗組員が、私のトランクをひったくり、


「ほりゃーっ!」


と船の上で待っていた別の乗組員のところまで、トランクをぶん投げました。

(トランクの重量は軽く10キロ以上あると思います。空中を回転しながら飛んでいきました)


「イヤーッ!私のトランクがー!!!!壊れたらどうしてくれるの!!!!」


思わず半泣きの私。


「いやいや、大丈夫だから。出国手続きも終わっているんで、早く船に乗ってくれる?」


とあきれ顔の係員。


半信半疑のまま高速フェリーに乗り込み、2時間後、無事、香港のフェリーターミナルに到着しました。

(広州出発時に、出国書類の提出もビザのチェックも安全検査もされなかったので、香港入管で捕まったらどうしようかと内心ドキドキ)


香港到着後は、空路と同じように、イミグレーションカウンターのガラスの向こうにいる係官に記入済の入国書類とパスポートを提出し、無事、入国のハンコを頂きました。

また、広州出発時に空中を飛んでいった私のトランクは、何事もなかったかのように、荷物受け取り場所のベルトコンベアーの上に載っていました。

(´▽`) ホッ


そして、フェリーターミナルから外部につながる金属製の自動ドアを開けて、香港への第一歩を踏み出したのですが……


「なんじゃこりゃー!」


そこはデパートの売り場の真ん中だったのです。

(正確に言うと、ホンコンチャイナフェリーターミナルというホテル付き大型ショッピングモールの一角に、埠頭が付設されている)

すでに日本を離れて半年以上経っており、社会主義的サービスの無さ、品物の少なさにドップリ浸かっていた当時の私は、日本と同じくらいキラキラで品物にあふれた雰囲気に、一発でノックアウトされてしまいました。あぁ、田舎者って悲しい。


物と光であふれたショッピングモールを見ながら、『資本主義って、やっぱりイイなぁ……』と改めて認識したのでした。

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