第五十七話 上海の都市伝説
世界中のどこの都市でも、一つや二つは不思議な言い伝えがありますが、上海にも有名な伝説があります。その一端をちょっとご紹介したいと思います。
上海都市伝説 その① 『点を忘れた鄧小平』
上海都市部を東西に大きく二つに分けるように流れる黄浦江。
その流れには、楊浦大橋、南浦大橋など、いくつか大きな橋がかかっています。
そのうち、巨大なループ橋で有名な南浦大橋には、橋の支柱に鄧小平が揮毫した『南浦大橋』の大きな字が掲げられています。
なんとも勢いがあり、なかなかの達筆。でも、何だか”浦”の字の点の位置がおかしい。
バランス的に下過ぎるような……。
それもそのはず、年をとってしまった鄧小平は、上海市からの依頼で揮毫した時に、”浦”の字に点があることを、すっかり忘れてしまっていたのでした。
慌てた秘書官に、
「……主席、素晴らしい出来映えですが、”浦”の字に点を打つことをお忘れです。」
と注意された鄧小平は、慌てず騒がす悠々と、
「ふむ、ならば後から書き足せばいいだろう。」
と、字を書きあげてから、後で点だけ書き足したのだとか。だから、点の位置がヘン(;^ω^)
日本だったら、いくら偉い人でも、字が間違っていたら書き直すよね~~。
上海都市伝説 その② 『延安高架道路に眠る龍』
上海都市部には街を囲むように内環高架道路と、それを十字に分断するように延安高架道路と南北高架道路があります。(高架道路=東京でいう首都高速)
そのうち、延安高架道路は、外灘から虹橋地区まで伸びる市内の重要路線の一つです。
この道路は、”静安寺”という、東京で言えば赤坂か六本木のような地区を通っているのですが、高架を支える柱の一つにだけ、大きな龍のモニュメントが取り付けられています。
道路の建設当時、技術的には問題無いにも関わらず、この柱だけどうしても基礎を打ち込むことが出来なかったのだとか。失敗続きの状況に頭を痛めた上海市政府の幹部は、
「これは何か土地に祟りがあるのでは……?」
と、上海市内の有名な寺院のお坊さん達を呼び集めて、相談したそうです。
その結果、徳が高いと有名な、あるお坊さんが、
「この土地には、龍が眠っています。もしもこのまま工事を続けたいならば、誰かの命を引換にして龍を慰めるしかありません。……仕方ない、上海市民のため、私が犠牲になります。」
と言って、盛大な法要を行うことを上海市に要求しました。
お坊さんの言いつけに従い、上海市政府は道路工事をいったん中止し、7日間の法要を行いました。お坊さんは法要の間、ずっと経を読み続けていたそうです。
そして結願の7日目。
「この柱には、必ず9つの龍を彫るように。長きにわたり、道路を支えてくれることでしょう。」
と言ってお坊さんはお寺に戻りました。そして、そのまま亡くなりました。
お坊さんの予言通り、法要を開いた後は、基礎工事はスムーズに進み、延安高架は無事完成しました。そして、上海市政府は、龍を慰めるため、静安寺にある高架の柱の一つに、龍のモニュメントを取り付けたのです。




