第五十六話 寒いとバナナは破裂する
かなり昔のTV CMで、『マイナス40℃では、バナナで釘が打てます』と放映していました。
私自身の経験では、『マイナス40℃の状況は見たことがないけれど、少なくともマイナス15℃では、バナナが破裂してしまう』です。
北京の1月~2月は、一日の最高気温がマイナス1℃なんていうのも普通です。
つまり、冷蔵庫の中よりも外が寒いのです。
そんな寒い中、街角の果物売りの露店では、冬の定番のリンゴ、ミカン以外にも、南方から運んできたバナナも売られています。
中国の国土は広いので、冬でも気温が20℃以上あって、バナナの栽培に適しているような地方もあるのです。(例:広東省、海南省)
北京のマイナス以下の気温下で売られているバナナは、一見、外見には異常がないのですが、購入して部屋に持ち帰った途端、室内外の気温差に耐えきれず、あっと言う間に皮に大きな亀裂がはいり、中身があちこち露出してグズグズになり、一瞬にしてダメになってしまいます。
では、この現象を防止するためには、どうしたらよいか??
……答えは、買ってきたバナナを室内に入れずに、スーパーのビニール袋に入れて、窓の外に吊るしておく、です。
食べる時には窓を開けて、食べる分だけバナナを取れば、ほら、いつでも新鮮なバナナがあなたのお手元に!というわけです。
何しろ外気温が低いので、窓の外にぶら下げられた果物を狙う不届きな野鳥もおらず、結構便利なのですよ。見た目は悪いですが。
ちょっとの間ならば、冷凍食品やお肉やお魚も外にぶら下げておけます。天然のチルド室です。
それだけ寒い冬なので、11月くらいになって朝晩の気温が下がってくると、最低限必要な部分を残し、部屋中の窓と窓枠の間を梱包用のビニールテープでふさぐという"越冬"作業を行います。
窓を目張りして、気密性と保温性を高めるということですね。
もちろん、外国人駐在員や観光客が住むような超高級マンションやホテルでは、きちんとした二重サッシになっているので、この作業は必要ありません。
留学生寮のようなボロっちい建物だけ、窓の目張り作業が必要なのです。
この季節になると、校内の文房具店でビニールテープがたくさん売られるようになります。
その光景をみると、『あぁ、もうすぐ寒くなるなぁ……。(´Д`)ハァ…』と思うのです。
そして20年以上たった現在、職場で時々ビニールテープを使って、商品や書類の梱包を行うことがあります。
そのたびに、長くて寒かった北京の冬と、窓ガラスに貼られたテープを思い出して、ちょっぴりおセンチな気分になるのです。




