第五話 クレジットカードいまむかし
私の留学した大学には、当時『共産党学部』がありました。
つまり、トップ オブ コミュニズム。共産党の牙城です。
当時は今ほど市場経済が浸透していなかったこともあり、私やアメリカからの留学生は、"資本主義の犬。奴らのスパイかもしれない"と中国人学生さん達にこっそり思われていたわけです。
だからと言って、普段、差別されたり意地悪されたりすることはなかったのですが、つい、うっかり、中国人学生さんたちに対して、クレジットカードによる決済が、現金決済よりも便利などと言ったりすると、『中国独自の社会主義には合わない。資本主義はダメだ』、『アメリカの陰謀だ』(…何が??)なんて真顔で言われてしまうのです。
また、その頃は、街でクレジットカードが使える商店が極端に少なく、回線によるデータ送信なども全く出来ませんから、もしも使おうとしても、まずはクレジットカード会社が毎月発行している分厚いカード番号一覧表と、私のクレジットカードを照らし合わせて、有効なカードであることを確認した上で、カーボン紙で出来た伝票の下にクレジットカードを置き、上から番号部分をこすって写し取り、それからようやくレジ打ちして、私がサインして処理終了となります。(所要時間は15分から30分)時間に余裕がないと、とてもカード払いを使う気にはなれませんでした。
それから20年以上経った今、中国の都市部では、買い物の際に現金決済されることはほとんどありません。
"銀聯"という銀行口座からオンラインで直接引き落としされるデビットカードによるカード決済が当たり前になっています。なんと日本のデパートやドラッグストアでも当たり前のように使えます。
20数年前、私に対して『クレジットカード払いなんて中国のやり方には合わない』と言った学生さん達は今頃どうしているのでしょうかね…。きっと、大昔から使っていたような顔をして、当たり前のようにクレジットカード払いをしているのでしょうね。