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胖姐看中国  作者: 胖姐
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第四十九話 アイスティー?何それ?

飲み物の話題ついでに、もう一つ。


中国人は冷たい飲み物をガブガブ飲む習慣がありません。

夏の暑い日でも、常温または熱い飲み物を飲みます。

冷たい飲料は身体を冷やして、胃腸の働きが悪くなるから……という”医食同源”の考えに基づいているのだと思います。


最近ではコンビニで冷たいお茶を普通に売っているようになりましたが、1990年代は、街で冷たい飲み物を売っていること自体が少なかったです。

当時、日本に来た中国人が一番ビックリするのが、街中の自販機で冷たい缶入り烏龍茶を売っていることでした。(中国では烏龍茶は一部地域の飲み物だし、しかも急須を使って、入れたての味と香りを楽しむものなので、冷やして飲むという考えはない)


そんな状況なので、私が夏の暑い日に『キンキンに冷えたレモンティー飲みたい……』と思っても、まず売っているところが見当たりません。

高級ホテルのカフェくらいしかアイスティーをおいていません。

当時はお茶に添えるレモンすら輸入品だったと思います。


北京での留学修了を控えていた1995年のある夏の日、私は中国土産を買いに市内中心部に出かけました。

お土産を購入して、ふとノドが渇いていることに気づき、近くにあった日系の某ホテルのティールームに入りました。

初めて入ったホテルでしたが、メニューにちゃんと日本語で”アイスティー”と載っていたので、安心して注文して、しばらく冷房の効いた室内でくつろいでいました。

ところが………


ウェイトレスさんが恭しく運んできたのは、熱々の紅茶でした(;^_^A

しかもカップにリプトンティーバックを突っ込んで、お湯を上から注いだだけ。

カップの外に、ティーバックの紐がプラプラ揺れています。


「すみません、私が頼んだのはホットティーでなくて、アイスティーなのですが。」


私がウェイトレスさんに言うと、彼女は平然とした顔で、


「はぁ?アイスティー?……冷たいお茶が飲みたいの?」


と言い捨てて、いったん厨房に引っ込むと、ボウルに入れた氷を持って現れ、私の前に置かれた紅茶のカップにドボドボと氷の塊をぶち込みました。

当然、紅茶はカップからあふれて下のソーサーにたまり、それでも収まらずにテーブルの上にもこぼれました。

あまりの乱暴さにビックリして、言葉も出ない私( ゜Д゜)


「……ちょっとアンタ何なの、信じられない~!普通、アイスティーというものは、熱いお茶を氷がたっぷり入ったグラスに注いで作るものだし、しかもガムシロップやレモンを添えて持ってくるものでしょう? (-_-メ)」


と言うと、ウェイトレスさんは、私がなぜ怒っているのか理解出来ないようで、


「何を言っているの?お茶を冷たく出来たんだからいいでしょ。ガムシロップって何?甘くしたいのなら砂糖を入れればいいじゃない。」


と言い放って、氷だらけでお茶などほとんど残っていないカップに、白砂糖をドカドカとぶち込みました。当然、カップの中は溶け残った砂糖でジャリジャリ。さすがにたまりかねた私が、


「もう、アンタじゃ話にならない。ちょっと、マネージャーさんを呼んできて(# ゜Д゜)」


と言うと、黒いスーツに身を包んだ若い中国人女性が、私の怒声に恐れをなしたのか、おずおずと現れました。私がこれまでの経緯を話した上で、


「失礼ですけれど、こちらのホテルは日本企業との合弁で建てたホテルですよね?それなのに、まともなアイスティーすら出せないというのはどういうわけですか?まさかこのホテルの誰もアイスティーを知らないというのではないですよね?」


と嫌味を言うと、なんと予想外なことに、そのマネージャーさんは、


「申し訳ありません。私もアイスティーを飲んだことがありませんので、どういうものなのか分かりかねます。たぶん当カフェに勤めているスタッフの誰もがアイスティーを知りません。

……で、ところでアイスティーって何ですか?」


と言うではありませんか( ゜Д゜) もう、呆れて言葉もありませんでした。

メニューに載っているのに、作れないとはどういうこと???

きちんとクレームを出したので、さすがにアイスティーの料金を徴収されることはありませんでしたが、もう二度とこのホテルには足を踏み入れまいと、固く心に誓ったのでした。


それから時は過ぎ、2017年の北京では、街角にあるカフェで、フラペチーノなど冷たい飲み物を自由に楽しむ若者であふれています。でも、彼らの両親の世代は、ちょっと前までキンキンに冷えた飲み物なんて知らないし、絶対に口にしなかったに違いないのです。


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