第四十四話 中国人男性には女子力が必要
世界の男性のなかで、中国人男性ほど”女子力”を要求される人達はいないのではないかと思います。
中華人民共和国の建国の父である毛沢東が、かつて、『天の半分は女性が支えている』と発言して以来、中国の都市部では、当たり前のように女性の社会進出が進められてきました。
私が北京を初めて訪問した1990年代初めでも、地下鉄の運転手さんや寝台列車の車掌さんとして、普通に女性が働いていました。(女性が運転する地下鉄に乗った時は、何だかちょっと怖かったです。同性なのに失礼だと思いますが……)
昔は家庭内に閉じこもり、家事だけに従事することが多かった女性達が社会へ進出した、ということは、誰が代わりに家事を行うのでしょうか?
……実は、それが男性なのです。
決して専業主夫になるわけではありません。家事を夫婦間で完全に分担して行う習慣がついた、ということなのです。
特に、料理や食材の買い出しについては、男性が請け負うことが多いように思います。
私が作ることの出来る中国家庭料理は、すべて中国人男性(友人の旦那さんなど)から教えて頂きました。市場での野菜の選び方や、果物や野菜に付着している農薬(?)を洗い落とす方法など、生活に密着した部分まで細かく教えて頂いたので、今でもとても助かっています。
中華料理は、割とダイナミックに中華鍋をふるうことが多い(しかも鍋が重い)ので、もともと男性向きの料理なんですよね。
かつて、中国人女性に、なぜ男性が厨房に入って料理をすることが一般的なのか、と訊ねたところ、
「中国では、男の子が生まれると、将来の生活力が付くように、家事を多く手伝わせることが多いのよ、特に都市部は。自分の面倒くらい自分で見られるようにならないと、女の子に嫌われちゃうからね。」
という回答がかえってきました。おおーっ(◎_◎;)
では、女の子が生まれたら、どのように育てるのか、と再度訊ねたところ、
「女の子が生まれたら、才能を見極めて、その勉強をしっかりやらせるかもね~。たとえ一人になってもお金を稼いで、しっかり自立して生きていかれるようにしなくちゃ。」
という、これまたびっくりな回答がかえってきました。( ゜Д゜)
何だか日本とは逆の発想のような……。
中国人の友人宅を訪問すると、旦那さんが料理を作って運んできて、奥さんはお客様の接待やお茶を入れたりする、ということが多いように思います。
学校への子供の送り迎えなども男性が普通にこなしていることが多いです。
ちなみに中国の学校の学習カリキュラムには家庭科が存在しませんので、家族が子供に家事を教えない限り、よそで学ぶ機会は、ほとんどありません。
男女間での家事分担が進む中国ですが、男尊女卑の考えが全く廃れたわけではありません。
農村部や、中国でも北方は、”大男人主義”という、亭主関白の考え方があります。
日本人は、すべてこの”大男人主義”だと思われているみたいで、よく、中国人から、
「胖姐さん、日本人の男性は、すべて”大男人主義”(=亭主関白)なんでしょう?
奥さんは旦那さんに対して、『ハイ』しか言っちゃいけないって本当ですか?」
と聞かれます。
「うーん、そうですねぇ……。戦前の日本は亭主関白が一般的で、確かに『ハイ』しか言えないような雰囲気があったと聞いていますが、今ではほとんど無くなりましたね。でも、今でも日本の九州と言われる地方には、まだ”大男人主義”が残っています。男性のほうが威張っていますよ。」
私がこのように答えると、中国でも恐妻家が多いことで知られる(=家事能力が高い)上海人男性達は、どこか羨ましそうな表示を浮かべて、
「へぇー。そんな男性は、上海にきたら、女性達にコテンパンにやられますね。」
と一様に答えるのでした。
中国人男性は家事能力は高いのですが、男女同権が根付いているので、精神的に甘えさせてくれません。奥さんに対して、経済的にも精神的にも同等のパートナーであることを求めます。
そこが良いという人もいれば、無理という人もいるかと思います。
……ちなみに、あなたはどちらを選びますか??




