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胖姐看中国  作者: 胖姐
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第三十三話 中国の乞食

最近、中国は経済的に豊かになってきているので、街角から『物乞い』の姿が消えました。


今から20年以上前、私は広東省深セン市で、子供の集団物乞いに付きまとわれて、結構怖い思いをしました。(集団で囲まれて、お金をあげるまで足にしがみつかれた)

当時は、上海駅前でも、タクシーの降車場に物乞い達が待っていて、停車したタクシーを囲み、後部座席のドアを外から無理矢理開けようとしたり、窓の隙間から手を突っ込んで、財布や荷物を奪い取ろうと狙っていたので(まるでゾンビに囲まれたような状態)、わざと降車場から離れた場所で車を止めてもらって、荷物を持って改札に逃げ込むようなことが度々ありました。

北京でも、外国人がよく歩く通り(建国門外大街)には、物乞いが100mごとにいて、まるで駅伝のように『お金を恵んで下さい~~』と追いかけまわされました。100mごとにきちんと1組ずつ物乞いがいるのは、たぶんその区間だけが縄張りなのだと思います。


これらの物乞いは、当時から、後ろに黒社会(ヤクザ)がついていて、組織的に行われている事業だと言われていました。子供連れの物乞いも、決して実子を連れているわけではなく、黒社会(ヤクザ)から、1日当たり××元の契約で、他人の子供を借りているのだとか……。


私は、個人的には、何かを売ったり、大道芸を見せたりせずに、お金だけをせびるような物乞いは好きではありません。

外国人が来るレストランの前で花や小物を売っている少女や、道で胡弓を弾きながらお金を乞うている人には、些少ながら、きちんと代価を支払ってきました。

それは彼らが、何か(物品や芸能)を売っている“商人(アキンド)”だからです。


私の北京留学時代に、市内中心部に出るたびに物乞いに追いかけまわされるので、どのように撃退したらよいかを、中国人の先生に訊ねたことがあります。

当時、私の中国語クラスの担任教師だった先生は、日本でも教鞭をとったことがある学者でしたが、バリバリの中国共産党員だったため、


「胖姐さん、まず言っておきますが、中国には物乞いは存在しません。新中国の建国に伴い、資本家の持っていた財産は他の人にも分けられて、富の偏在は解消し、社会的不平等が無くなったからです。

それでも、もしも街角に物乞いがいるのだとしたら、それは彼らが故郷の政府機関に助けを求めずに、自分勝手に都会に出てきて行っていることですので、『あなたは地元に帰って、政府に生活保護を申請するべきです。』と言って下さい。」


と、まじめに回答されました。

……あのね、先生、街角で物乞いに小銭をねだられる度に、『田舎に戻って生活保護を申請して下さい』と言うの??そんなことを言っている間に、物乞いの集団に囲まれて財布を盗られてしまうのがオチでしょ(;^ω^)

申し訳ないけれど、先生の回答は正論ではありますが、実情にそぐわない、ちょっと冷たい回答だと思いました。


中国政府の怖いところは、物乞いや風俗業についている人達について、人権を無視している面があるところです。

21世紀に入るまで、中国では、身分証明書を所持せずに街をぶらぶらしている人を、『浮浪罪』で収容所に入れることが出来ました。(外国人も同様)

中国の大都市では、サミットなどの大規模な国際的イベントがあるたびに、警察の大がかりな手入れがあり、街で物乞いや風俗業についている人達が一斉検挙されます。

そして、そのような人達は、まとめてトラックの荷台に乗せられ、山奥に捨てられます。

付近の鉄道やバスが通っている街まで、歩くと2日くらいかかる微妙な距離の場所に捨てられるのです。

山奥に捨てられた人達は、鉄道やバスが通っている街まで何とか自力で戻り、それから公共交通機関を乗り継いで、もと居た大都市まで帰ってくるのですが、戻るのに最低一週間くらいを費やすので、その間に国際的イベントは無事に閉幕している、というわけです。

イベントの期間中は、街に物乞いや水商売のお姉さん達が一時的にいなくなり、外国から来た偉い人達には、中国の汚い面を見られずにすむのです。……なんというすごいアイディア(;’∀’)


ここ最近の1~2年は、本当に物乞いの姿が中国の街から消えました。

経済的に豊かになり、大都市まで出てきて物乞いをするよりも、地元の街で働いて定収入を得るほうが、割が良くなってきたのかもしれません。また、物乞いを管理していた黒社会(ヤクザ)に、きちんと警察の手入れが入るようになったこともあるかと思います。

外国人としては、安全に街を歩けるようになったのは助かるのですが、もしも物乞いをしていた人達が、私達の目の届きにくいところに隠されるようになっただけだとしたら、あまり良いことではないと思います。

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