第三十一話 昔のボーナス
みなさん、『ボーナス』というと、何を連想しますか?
ローン返済?貯金?自分へのご褒美?
中国では、日本のように年2回(夏、冬)のボーナス支給ではありません。
”Double Pay”と言って、12月分の給与が2倍になります。(香港も同様だそう)
ただし、これは外資系企業の習慣なので、国営企業や公務員は、またルールが違うと思います。
私が中国に留学していた当時、公務員である教師達のボーナスは、年2回でした。
それは、夏の『西瓜ボーナス』と 冬の『白菜ボーナス』 です。
その名の通り、ずばり現物支給です。
夏は熱中症対策として、水分補給のための西瓜が山ほど配られます。
当時、私の先生のお宅に実際に支給されたボーナスの写真を見せて頂いたことがあるのですが、浴室のバスタブいっぱいに、でっかい西瓜がゴロゴロと……。
北京の西瓜は日本の西瓜と違って細長く、人間の赤ちゃんくらい大きい(アメリカ生まれの品種らしい)ので、写真でもかなり迫力がありました。
いくら涼しい浴室に保管していても、西瓜は生ものなので、早く食べないと腐ってしいます。
なので、先生からボーナスのお裾分けを頂いて、甘い甘~い西瓜を堪能させて頂きました。
私が西瓜を分けて下さった先生に、
「日本では西瓜の値段がとても高いので、一人でこんなにたくさん食べられるなんてことは、めったにありません。」
と言ったら、先生から、
「では、次に帰国する時には、北京土産として西瓜をもって帰りなさい。安いし、美味しいから。
赤ちゃんのおぶい紐に西瓜を入れて背負ったら、何も言われずに、こっそり税関を通れるんじゃないの!?( ̄ー ̄)ニヤリ」
と言われたのもよい思い出です。
冬については、北京では気温がマイナス10度以下の日々が長く続き、葉物野菜がほとんど市場から無くなってしまうので、木枯らしが吹く頃になると、大量の白菜が支給されます。
みな、支給された白菜を干し野菜にしたり、塩漬けにしたりして、長い冬の間の野菜不足を補えるように、あらかじめ準備するのです。
(ちなみに朝鮮族ならば、配られた白菜をキムチにするらしい)
大学の学生食堂近くの中庭は、しばらくの期間、保存待ちの白菜だらけとなり、まるで畑のようになります。
北京の冬の料理に、この白菜の漬物を使った鍋料理があります。(酸菜白肉鍋)
ちょっと酸っぱめの白菜から出た良い出汁が、中にはいった豚肉や春雨とマッチして、ホコホコと身体が温まってくる、実に北国らしい美味しい一品です。
今ではきっと、西瓜と白菜のボーナスはなくなってしまったことでしょう。
もしも残っていたとしても、現金支給に代わっているかと思います。
個人的には、もしも生ものでボーナスを支給されたら処理に困ってしまいますが、北京らしい習慣が消えていってしまうのは、ひと昔前の北京を知る者としては、ちょっと寂しいものです。




