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胖姐看中国  作者: 胖姐
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第二十二話 月餅ってそんなに大事なの?

『月餅』という中華菓子をご存じでしょうか?

小麦粉で作った薄い皮の中に、油で練った餡(小豆餡など)が入っているお菓子です。

中国では、9~10月頃の"中秋節"というお月見の時期に食べます。

日本だと横浜中華街や新宿中村屋が、通年で販売しています。


私は月餅があまり好きではありません。

特に、餡の中に塩漬けのアヒルの卵の黄身が入っている、伝統的なタイプは苦手です。

塩漬けのアヒルの卵自体は、すごく好きなんですよ。米飯やお粥に合うお菜になるので……。

ただ、あの黄身入り月餅の甘塩っぱくて、くどい味付けが、どうにも好きになれません。


昔の月餅というのは、1つを家族で切り分けて食べられるように、直径10cmくらいある大きなものでした。ところが、中国圏も核家族化が進んだこと、また、昔ながらの油分の多い月餅が健康的でないとして避けられるようになってきたので、現在、主流なのは、直径3cmくらいのミニタイプで、油分を減らしたものになっています。


また、ハーゲンダッツがアイス月餅(…という名のアイスケーキ)を発売したり、スターバックスがコーヒー月餅(…という名のチーズケーキ)を発売したりして、段々と種類も豊富になってきました。

特にスターバックスの月餅は、日本に帰化した元・中国人の知人が一口食べて、


「あ、こりゃダメだわ。ウチの妻に食べさせたら、今度から月餅はこれにしろって言われる。」


というくらい、ある意味、非常にまともな味付けです。(要するに中国っぽくないということ)


中国人にとって、月餅とは、日本で言うとお中元にあたるようで、この時期、各企業はお得意先様に月餅を進呈します。実物を配ると嵩張って大変なので、有名レストランやホテルが販売している『月餅引換券』をお得意先様にお渡しすることのほうが多いです。(ビール券みたいなものかな)

『月餅引換券』をもらったほうは、決まった期間中に、指定の場所に箱入り月餅のセットを取りにいくわけです。あぁ、面倒臭~い。


また、福利厚生の一環として、工場で働く従業員全員に、箱入り月餅を配布することもあります。


私が東莞市にある工場に長期出張していた時、中秋節を間近に控えたある日の午後に、管理職が会議室に集められたことがありました。

私も呼ばれたので、ちょっと緊張しながら部屋に入ったところ、そこにあったのは、会議机の上に並ぶ、たくさんの月餅………。それぞれ①、②などの番号が振られています。


「これから今年度の月餅を決めます。

みなさん、番号順に月餅を食べてみて、どれが美味しかったのか、番号を言って下さい。」


と、部長の一人が重々しく言いました。


「え?……わざわざ集まって月餅を選ぶんですか?そんなの適当に総務課が選べばいいじゃないですか。」


と、驚きながら発言した私に対して、その部長は諭すように、


「胖姐さん、月餅選びは結構重要ですよ。従業員みんなに配布するんですから。組立ラインで働いている人達は、この月餅を食べずにとっておいて、旧正月の時に故郷へのお土産の一つにするんです。だから簡単に決めちゃいけないんですよ。味良し、姿良し、日持ち良しの月餅を厳選しなくちゃ。」


中秋節から旧正月まで、まだあと半年近くあります。そこまで月餅は日持ちするものか……。

いくら真空パックになっていたって、製造年月日が半年も前のお菓子をもらってうれしいの??


そして管理職全員で、小さく切られた月餅をたくさん試食し、喧々諤々のやり取りの末、ようやくあるメーカーの品が選ばれました。


ちなみに、私が美味しいと思った月餅は、


「胖姐さんが美味しいという月餅は、棗餡だったりメロン餡だったり、フルーツの風味が強いものばかりで、昔ながらのタイプじゃないからダメ~~!」


という理由で、早々に却下されました。チェッ(* ̄- ̄)

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