第十八話 ゲテモノじゃないよ
中国では、昔から、
『4本脚のものは机以外、2本脚のものは自分の両親以外、みんな食べる』
と言います。
実際、日本人の目から見て、中華料理にはゲテモノといえるものが少なくありません。
以前、私が宴会に出た時にも、蓋付きのスープ椀が出てきたので、何気なしに蓋を取ったら、黄金色に揺れるコンソメスープの底に、小ちゃな赤ちゃんスッポンが、丸のまま姿煮の状態で沈んでいたことがあります。
あれには、ちょっとギョッとさせられました。(でも美味かったっす)
秋から冬にかけては、"蛇"が旬を迎えます。
日本では蛇を食べませんが、中国では、立派なご馳走の一つです。
"死んだ肉は不味いので食べない"というお国柄ですから、レストランで蛇を注文すると、ボーイさんが生け簀から蛇を取り出して布袋に入れ、お客様のテーブルのところまで持ってきます。
そして、大きな金挟みで蛇の首をつかんで取り出し、
「このくらいの大きさでいかがですか~~?」
と、聞くのです。
ちなみに、その蛇は大半が毒蛇で、万が一噛まれたりしたら、大事になります。
こちらは蛇に噛まれたくないので、全員が半分逃げ腰になっており、蛇の肉付きや、活きの良さを確認することなんて出来ず、たいてい、
「そ、それでいいんじゃないかな……。(;'∀') 調理法はお任せします。」
とだけ言う羽目になるのです。
そして15分後、さきほどまで口を開けて当方を威嚇していた蛇さんは、カラっと揚がったフライか、鶏肉などと一緒に細切り肉のスープ(醤油味でとろみがある)になって、宴会のテーブルの上を彩るのです。
蛇肉は、鶏肉のささ身に似てアッサリとした白身肉で、噛みしめると淡泊な滋味があり、ハッキリ言って"美味い"です。
皮を剥いで、原型が分からない料理にしてくれたら、ほとんどの日本人が食べられると思います。
中国の中でも、ゲテモノに近い感覚とされているのは、犬肉と猫肉です。
犬肉は身体が温まるとされているので、よく食べるのは、中国でもロシアや北朝鮮に近い、寒冷な地方です。それと、昔から犬を食べる習慣が残っている中国南方の広東省あたり。
中国でも、上海あたりだと犬は食べません。都市部でも、北方にある北京では犬を食べるとききましたが、戌年生まれの人は食べないそうです。(共食いになるから)
猫肉は、中国でも南方の広東省あたりだけが食べるようです。
私の恩師(日本人)が、かつて中国の広州で教鞭をとっていた時、生徒さんに対して、
「犬と猫のどちらが好きですか~?」
と聞いたら、
「犬が好きです。猫は食べるところが少ないので。」
と、斜め上の答えが返ってきて、驚いたと言っていました。
確かに、広東料理店で、猫肉の載ったメニューを見たことがありません。食べるところの少ない珍しいお肉なのかもしれませんね。
なお、日本では、池袋のチャイナタウンあたりにある東北料理店で犬肉料理が食べられます。
たぶん冷凍の輸入肉を使っていると思われます。(メニュー上の表記は"狗肉")
勇気のある方は、チャレンジしてみてはいかがでしょうか?