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胖姐看中国  作者: 胖姐
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第十三話 ネズミが出た~!

東京でも、たまにネズミを見かけることがあります。

地下鉄の線路の隅、飲食店が並ぶ通りのゴミ箱の陰……。

でも、それほど一般的な生き物ではないように思います。


1997年の春から夏にかけて、私は上海でも"下町"と言われる地区にあるスーパーで研修をしていました。

研修といっても、スーパーの店員さんとして、現地のスタッフと一緒に、朝から晩まで汗水たらして働くのです。


スーパーがあるのは、小さな印刷工場やソープランド(?)が入っている雑居ビルの1階でした。

お店の周りは、"里弄"とよばれる、2階建ての上海独特の長屋です。

古い地区なので、住み着いているネズミが多く、スーパーでいくら駆除剤を撒いても、すぐに周囲の家々から新しいネズミが入ってきてしまう状態で、かなり悩まされました。


ある日、私が店の陳列棚にスリッパを補充しようと、棚の上から商品の入った箱を下したところ……。


"ヂュッ、ヂュー!"


という叫び声とともに、何か大きなものが箱の中から飛び出してきて、私の肩に軽くぶつかった後、ものすごい勢いで店内を駆け去っていきました。


「な、なに、今の……??」


私が恐る恐る箱を開けたところ……

在庫のスリッパはズタズタに嚙み切られてボロ切れと化し、スリッパの中にはいっていたウレタンを集めて、あったかそうなネズミのマイホームが……( ゜Д゜)

そしてそのマイホームの中には、小さな小さなネズミの赤ちゃんがウゾウゾとうごめいていました。


「うぎゃーっ!!!!(◎_◎;)」


と私が叫び声をあげると、現地スタッフが、


「…ど、どうしたの?何があったの、胖姐さん?……え、ネズミが出た?それくらいで驚いているの?日本にネズミはいないの?」


苦笑いしながら、ネズミ一家のマイホームをこっそり処分(=退治)してくれました。

たぶんあのネズミはドブネズミと言われている種類で、私にぶつかった親ネズミは、子猫くらいの大きさがあったと思います。


また、ある日の朝、私がスーパーに出勤すると、早朝勤務の現地スタッフ達が、みんなでソフトドリンクの陳列棚と天井、床を掃除しています。そして天井には茶色の大きなシミ。


「どうしたの?何があったの?」


と私が聞くと、夜中にネズミが忍び込み、棚に並んでいたコカ・コーラの缶に穴を開けたため、炭酸の力で中身の液体が天井と床に飛び散ったというのです。

当時、現地スタッフから聞いたところによると、ネズミは高価な飲み物や食べ物が大好きで、被害が大きいのは、


①お餅(うるち米のお餅で、韓国のトッポギに似ている。日本でいう白玉団子?)

②中華ハム(金華ハムなどが有名。豚肉を塩漬けしてカビ付け・熟成させたもの)

③コカ・コーラ、ペプシなど甘い炭酸飲料

④ミネラルウォーターのエビアン


特に④のミネラルウォーターについては、中国製の安いものには手を付けず、輸入品で高いエビアンばかり狙って穴を開けるのだそうです。


「ネズミって、私達人間よりも味覚が鋭いのかもよー。いいものばかり狙って食べているし。」


と現地スタッフは笑いながら語っていました。


その後、1~2年して、店のあった地区は再開発の波にのまれ、いったん更地になったあと、昔ながらの建物をリノベーションしたお洒落なショッピングモールと、小奇麗なマンションと整備が行き届いた公園のある高級住宅地に生まれかわりました。

当然、私が毎日駆けずりまわっていたスーパーも無くなり、今では公園の池になっています……。

あのネズミ達もどこか無事に移住出来ているといいのですが。

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