第十二話 中国で病院に行く
中国では、外国人を診てくれる病院というのは決まっています。
特に、医療保険の関係上、指定された病院(総合病院)にしか行かれないことが多いです。
北京、上海など大都市の場合、指定病院に『外国人専用クリニック』というものがあって、普通の中国人とは建物の入口も待合室も違うことがあります。大病院の中にさらに小さな別の病院がある感じ(!?)といえばよいのでしょうか。
もちろん、診て下さる医師も中国人ではなく、欧米系の外国人だったりします。その場合、
①私(日本人)が日本語で話す
↓
②中国人通訳が日本語を中国語に翻訳
↓
③別の中国人通訳が中国語を英語に翻訳
↓
④お医者様に伝わる
という感じです。ああ、ややこしや~、ややこしや~。
上海在住時に、私が重い食中毒にかかって、このような病院にかかった時、アメリカ人の医師に対して、仕事がたまっているので入院なんて出来ないと言ったら、
「OH……!!!(手を挙げて肩をすくめるポーズで)…JAPANESE WORKAHOLIC」
と呆れたように言われたことがあります。
結局、その時はひどい脱水症状を起こしていたので、その当日だけは入院しましたが、病室から携帯電話で仕事の指示を出していました。(当時は電波漏れについて、今ほどうるさくなかったので…スマン)
外国人は指定病院にしか掛かれないので、いわゆる"街の名医"には、普通、掛かることが出来ません。
私が上海に在住していた頃、しつこいニキビに悩まされていたので、現地の友人の勧めで、吹き出物を扱ったらピカイチとされる街の名医のところに、半信半疑で行ってみることにしました。
その医師は外国人を診る資格がないそうなので、私は日本在住の華僑でまったく中国語が出来ない、という設定にして、友人が通訳に入ってくれることになりました。
(医師の前で一言も中国語を話してはいけないと言われました)
その先生の診察室は、上海でも下町と言われているエリアのアパートの1階にありました。
中に入ると、私が見慣れている病院とは違い、建物内の電気が消されてしまっているので、昼間なのに何だか妙に薄暗い。
しかも、診察室内の診察ベッドの下には、今日の夕食の材料らしき長ネギなどが、買い物袋に入ったまま放置されてしました。そして医師(中年のおばちゃんでした)の身に着けている白衣が、妙によれよれでシミだらけ。さらに医師の口から出るのは上海語のみ。
あまりの室内の乱雑ぶりに、眉間にしわが寄り、思い切り不安気な表情を浮かべた私。そんな私を横目に見ながら、友人が冷汗をかきつつ、おばちゃん医師に対して病状の説明をしてくれました。
おばちゃん医師は、友人の説明を聞いたあと、普段の私の食生活や睡眠時間などについて、いくつか質問をしてきました。それから、私に舌をださせて表面の色を見てから、脈拍を長い間測っていました。
そして、重々しく一言。
「大丈夫。このニキビは、すぐに治るよ。」
そして、メモのような用紙に、薬の処方箋を書いてくれました。診察料は、当時、日本円で200~300円くらいだったかと思います。
(漢方薬を煎じることが出来ないと、私が我がままを言ったら、市販薬で似たような処方のものを探してくれました。でもすごく大量の粉薬でした)
現地の友人いわく、『この先生は理にかなっているよ。西洋薬のビタミン剤や抗生物質で、とりあえず目先の症状を抑えておいて、その間に、漢方でゆっくり体質改善を図るやり方だね。今の中国の医学はジャンルにとらわれず、有用なものを採用するやり方に変わってきているから』とのこと。
確かに、そのおばちゃん先生に頂いた処方で、1ヶ月以内に目につくような酷い炎症は治まり、そのあと3ヶ月くらいかけて、ゆっくりと肌がきれいになっていったのでした。
日本人は東洋医学にあまりなじみがないけれど、確かにやり方によっては、西洋医学よりも適している面があることを実感させられました。特に皮膚やアレルギー系の病気には、漢方での治療も考慮に入れてもよいのではないかと思います。漢方、結構おススメです。