「dis・二ーランド」(1)
〝創りものの何かに 理由を探すなら
笑う気は無いけど 友達にはなれない
そっちから願い下げなら お互い様のハッピーエンド
二度と逢わないなんて素敵だね
それじゃあ、またね〟
「あー。そうか、わかった」
自分の口から漏れた言葉に驚いて、けれどそれからは安心して楽しめた。楽しめた、はずだった。
僕はどこかで望んでいたのだ。メリーホルダーが自分の人生の延長線上にある可能性の一つであることを。けれど、違った。僕は間違っていた。
彼らはそれなりの努力や困難の結果としてステージに立っている、そのことに気付いてしまった。いや、気付いたことは正確にはそれではなく、僕自身が未来のために何かについて努力することを望んでいないということだ。
未来が見えない、なんてJポップの歌詞のようなことを言いながら、心のどこかでは「ちゃんとした大人」になると思っていた。ライトノベルの主人公にはならなくても、バンドマンくらいにはなるだろう。そんな風に、彼らを勝手に見下していたのだ。
自分に吐き気がした。気持ちが悪くて居心地が悪かったから「そうか、わかった」と自分を納得させる言葉を吐いて、とても楽になった。
そうだ、僕は大した人間ではないし、大きな可能性を秘めているわけでもない。ちゃんとした大人になりたいわけでもないし、今の自分にさえ何の希望も持っていない。何かに反発する気もないし、絶望さえもしない。明るく元気に諦めている、つまらない子供です。つまらない、子供なんです。
せめて今は音楽を楽しもう。人を喜ばせるために作られた音楽を楽しもう。
クラスメイトに向けるものと同じ笑顔を浮かべて、放課後の教室にいるような気軽さで、僕はステージを眺めることにしたけれど。
教室では見たことのないような羊岡さんの笑顔や手のひらの力に気圧されて、引きずられるように僕はその場を去ることになった。
去り際にイントロが流れる。一瞬でタイトルが思い出せるくらい聴き込んでいたその曲は、僕が「謝罪請求」の次に好きな曲だった。
〝キミとボクは友達 理由はいらないよ
そんなこと言うなら お願いだ、死んでよ
どっちから殴り始める ご都合主義のディスニーランド
二度と遭わないように帰ろうね
それじゃあ、またね〟