表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/21

閑話  ある勇者のゲーム日記

○月X日

 念願の勇者アバターを購入した。

 三等の、特に給料の安い仕事をしている俺には半年の貯蓄生活を要したが、このアバターさえあれば、俺を見て鼻で笑っていたNPCどもも目の色を変えてくるだろう。

 奴らが人を見た目で判断してくる様子には虫酸が走るが、現実と違い、ゲームの世界だけは全くの別人になりきり、新しい人生を謳歌できる。これでようやく俺にも春が来る。


X月○日

 インフルエンザにかかり、前回のプレイから10日後にログイン。

 何故かいつもの勇者アバターが使えない。運営にメールを送る。

 メールが即送られてきて、目を通す。信じられない。もう一度読み直す。

「勇者アバターの所有権は運営にあり、同アバターの購入は運営から『一時的に借りたもの』と見なされています。貸し出し期間は一週間であり、それを過ぎるといかなる理由であれ没収されます。それまでに購入者様が蓄積されていたデータは全て消去されます。再購入は可能ですが、消去されたデータが戻ることはありません。同様のケースが二度続くと『やる気なし』と判断され購入不可となります。また、ゲーム内でのミッション失敗やPK敗北を三度繰り返すと『勇者適正なし』と判断され、お客様のIDでは金輪際、勇者アバターを購入することができなくなります」

 理不尽すぎる内容に、正直、身体が強張った。だが、それでも俺は甘んじて受け入れた。

 俺が手に入れたこの勇者アバターはWiki情報が正しければ、これは歴代勇者の中でも屈指の最強アバターなのだ。レベルが上がりにくいデメリットはあるが、ひとたびレベルアップをすると各種能力値の上昇率がノーマル戦士の3倍から5倍の開きになって現れるのだ。それをみすみす諦めるのは愚か。そうだろ?

 今回は不運だったが、逆に今回のことがあったから俺は気付けた。

 俺は今日から健康的な生活を送り、体調に気を使うことにする。


■月□日

 ダンジョンにてPKに遭遇する。なんとか勝てたが、帰還途中にモンスターの襲撃を受け、死亡。もちろん、今までのデータが吹き飛び、やる気を失う。


□月▲日

 三度目の正直なのか、ここのところ順調だ。

 レベルは17。女戦士、女魔法使い、女僧侶というバランスのいいパーティーが組めた。

 見た目に弱いこいつらは俺がちょっとその気を見せるとすぐヤらせた。ビッチどもが。


▲月○日

 俺の見た目に惑わされない東洋風の巫女が仲間になった。

 負けん気も強く、可愛がり甲斐がありそうだ。


▲月■日

 巫女の持ってきた探索系ミッションの内容が興味深い。

 推奨レベル:22。俺たちのPT(パーティー)レベルは21。

 少し用心が必要だが、こなせないことはないだろう。

 『必須言語:日本語』というのがあった。日本語でないと解けない謎解きでもあるのだろうか。


▲月◎日

 偶然出くわしたオークの魔法のようなもので瞬時にゲームオーバーになった。

 これで三度目の失敗。もう勇者にはなれない。死のう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ