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金成太志、魔王の娘を肉奴隷にしようとする。

「へぇ、女の子の部屋へ勝手に」

「おぼぼ!」


 今回も(というより何度目になるのだろうか?)若狭さんのおしおき棒(スタンロッド)が冴える。

 後ろ手に縛られて、正座させられ、身動きとれない体勢なのをいいことに、それはビリバリと鋭角な音をたてて皮膚の上をなめ回すように移動する。

 その度に言い様の無いつおーい刺激が肌を刺す。悶える。たまんない。


「はぁはぁ、アヘ」

「おい、こいつ、喜んでおらんか?」

「おかしいですねー。前回までは楽しい声で泣いてくれましたのに」

「こいつ、オークだからな。大概の痛みはいずれ慣れてしまうぞ」

「そうですね。オーク、舐めてました。仕方ないですねー、奥の手です」


 謎の女の子の指摘通り、最近の俺は若狭さんの電撃棒の刺激が心地よくなってきていた。

 いや、痛みはある。めっちゃ痛いよ。でも、同時に癒されるのだ。

 中身は年齢不詳の婆さんとはいえ、外見ガワが美少女のキツネ娘が精一杯怖い顔をして苛めてくるのである。

 現実世界ではほぼ実現不可能なプレイを体験できているという実感は、俺を笑顔にさせた。

 それを謎の女の子には余裕ととられてしまった。

 それで、若狭さんはこの不自由な身体を転がせると、無防備にさらけ出された俺のサラミが無双出来ない可動部の死角に電撃棒を押し込んできた。

 さしずめそれは、硬い殻が自慢の生物が弱点である柔らかい腹部を抉られるような未知の苦痛。


「おぼぼ! おぼぼ!」

「はぁん、いい鳴き声ですわ」


 ようやく待ちわびた瞬間を得られ、うっとりする若狭さん。


「何、コイツら、怖い」


 そこの君、実に正常な認識をありがとう。



 ☆



 いつもの折檻が終わったあと、俺は彼女の名前を聞いた。

 彼女は少しばかりの浚巡しゅんじゅんを経て、ライラと名乗った。


「ライラね。カワイイ名前じゃないか。しかし、どこかで聞いたような」

「私の知識によりますと、天使の名前が該当します」

「へぇ、名前持ちの天使か。あぁ、思い出した。夜と赤子の守護天使ライラ!」


 俺がその名を連呼するほどに顔がますます紅潮していくライラ。


「ノーリ、俺はまた何か失言をしたか?」

「私にはわかりかねます」

「ワシは魔王の娘じゃぞ。それが天使の名前なんぞ付けられて恥ずかしいったらありゃしないんじゃぞ!」

「そんなもんかね?」

「人によりますね。彼女がどれだけ父親を大事に思っていたかによる、とも」

「いいか、ライラ。俺の名はフトシだ。名前の由来はこれだ」


 と俺は腰を盛んに振り回す。腰のホルスター&赤のマフラーがいい仕事をするのでその全容は掴めなかっただろうが、言いたいことは伝わったはずだ。


「いきなり、気持ち悪いものを見せるな、この変態!」


 あれれ? おふくろや他の星のレディたちには人気があったんだがな。

 ということは、こっちの反応が一般常識というやつか。しくじったな。


「まぁ、いい。アレが太いからフトシだ。だが、俺はそのネーミングを疑問にも恥とも思わなかった。むしろ、誇りにさえ思う」

「それで?」

「ライラの守護する夜の部分なんか、魔王の娘というポジションが本当ならしっくりはまってると俺は思う。赤子の方はよくわからん。確かに天使ライラには赤子の出産を見守る役割があった。だが、名前が同じというだけで、お前が天使そのものに引け目を感じる理由なんぞなくないか?」

「そういうものじゃろうか?」

「そういうものだと思うがね。お前さんがゴブリンの男でこんなところに押し込められていて、ライラと言う可愛らしい名前だったら、素直に『ないわー』と思うがね」

「高位なる生まれのワシをゴブリンごときと同じに扱うな!」

「物の例えだ。イチイチ真面目にとらえるな」


 女の名前に関する感性はよくわからんが、俺の知っている守護天使ライラと同名のこの子も成長すれば目を見張るレベルの美人になるだろう。だから、本家のライラも悪い気持ちにはならないと思うんだが。むしろ、嫉妬したり? つーか、天使の嫉妬とかレア感情だよな。見てみたい。


「フトシさま、フトシさま」

「何だろうか、ノーリ」

「私には運命に見えますよ。子作りして、赤ちゃんが出来そうになったらライラちゃんが守ってくれるわけですから」

「ブボッ!」


 婆さんのトンデモ発言に吹き出さずに入られなかった。

 何で、このガワだけ美少女はこんなにも積極的なのだろうか。


「お前ら、ホントに仲が良いのう」

「フトシさまが産まれたときからお世話してますから」

「お世話になってます。得意分野以外は頭が上がりません」

「その割りには、奇妙な主従関係じゃのぅ」

「……見えるのですか?」


 その発言と共に、若狭さんの瞳がスッと細くなる。遅れて殺気がライラに向かう。


「ワシは魔王の娘じゃと言ったろう。じゃから、その気になれば、お主らの本当の名前と姿が見える。フトシ、お前はそのままじゃな。あちらの世界から来た住人の割りには己の姿を偽らない。何故じゃ?」


 ライラは臆せず話を進めてきた。

 正直なところ、若狭さんの殺気は饅頭の件よりも重圧がひどいのだが、慣れた?

 いやいや、よく観察してみると額にじっとりと汗をかいているし、唇が乾燥してきている。

 それでも無理に口を挟むのか。

 その意図はなんだ? と思いつつ、話に乗ってみる。 


「俺は自分に自信があるからな。それにこちらの世界に来た理由はお嫁さん探しだ」

「は?」

「あちらの世界のメスは『資産持ちイケメン』以外の男をつがいとしては見てくれなくてな。それでこちらの世界とあちらの世界を行き来できる力があって、俺のありのままにも抵抗がない女を探している」

「そこにいるではないか」


 ライラが若狭さんを指差すが、俺は首を横に振る。


「彼女はあちらの世界では、俺の家の筆頭使用人なんだ。不慣れな俺のために、こちらの世界に望んで付いてきているし、感謝もしている。だが、次期当主としては安易に使用人に手を出すのもどうか、という俺の考えがあって、固辞している」


 まぁ、あちらの世界ではシワくちゃの婆さんなので、こちらの世界で安易な誘惑に乗るとあとが非常に怖いーーというのが本音だが、皆まで言う必要はあるまい。

 そんな俺の回答に満足したのか、頷くライラ。


「ノーリ、お前さんは偽り……


 話が若狭さんに移ろうとした瞬間、若狭さんの眼力がパワーアップした。

 かの魔眼の魔王バロールを彷彿ほうふつとさせる威力により、ライラがまるで石化したようにその場に固まってしまった。

 まぁ、プライバシーを他人の口からペラペラと喋られては気持ちいいものではない。

 その点において、ライラは虎の尾を踏んだ。

 一応、魂が抜けていないかを確認したのち、気付け薬をがせて意識を取り戻す。

 ライラは軽く微笑む若狭さんと視線が合うとややパニクったが、俺がビンタをして落ち着かせた。


「こちら側の世界の住人ライラよ、命が惜しければ、あちら側の世界の住人のことを無闇に口にすべきではない。今回は気絶だけですんだが、他の人によってはお前の身の上はもっとひどくなるだろう」

「例えば? 具体的に言うてみよ。じゃなければ納得できんぞい」


 可能性に思考を巡らせていて、何でこの子が宝物庫にずっと入っていたのかに気付いた。


「今ならお前の父親がお前をこんな箱の中に押し入れた理由がわかった。お前の力を俺たちの世界の住人に知られないためだ。ここの世界の住人であるお前にとっては力を示すぐらいの気持ちだろうが、俺たちの世界の場合は情報に対する価値が違う。お前の持つその情報力をフル活用すれば、俺はあちらの世界から来たプレイヤーを手玉にとれる。そして、俺はお前を手に入れることにした」

「手に入れる……じゃと?」

「ああ。俺はこの世界に来たばかりで右も左も分からないが、お前が俺のパーティに加入してくれれば、この先の旅路が多少は楽になるだろう。そのための労力は惜しまない。俺の物になれ」

「そ、そそれは求婚のプロポーズか?」

「怯えるな。俺はあちらの世界とこちらの世界を行き来できる女に用がある。お前は俺と共に旅に出て、行く先々で好みの男を捕まえればいい。俺はオークだが、パーティの一員である限りはその貞操を保証しよう」

「断れば?」

「そうだな。俺以外の誰かがお前を利用するのもしゃくだ。死を望むのなら、介錯しよう」


 俺は口径の大きなリボルバーをホルスターから取り出し、ライラのあごに押し当てる。

 若狭さんにも異論はないようだ。

 室内に充満する殺意に、ライラは泣き叫んだ。


「死にたくない! 生きたい! 外に出たいの!」


 ライラの意思表示は確認した。次はパーティ加入の手続きだ。


「どうしても?」

「オークの約束が信じられないなら、納得ずくの方法もある。肉奴隷契約と言うヤツが」


 ライラは迷わずにパーティに加わった。だよなー、やっぱヤだよな、肉奴隷。

<インフォメーション>


☆フトシ様は【電撃耐性:レベル1】を獲得しました。おめでとうございます。

○フトシ様のパーティ作成は受理されました。チーム名は如何されますか?

○ライラ様の新規加入を認知しました。

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