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金成太志、降下中に口を盛んに動かす。

 とりあえず、皆さんがそろって気絶していることを良いことに、先に壁に念を飛ばした。すると、金属板を貼り付けただけの壁が不自然に盛り上がり、食用枝肉をぶら下げるには申し分ない強度のフックができた。

 次にリーダーオークをそのフックに吊り下げるのだが……ヤツは重すぎた。

 見た目は俺とそう変わらない身長なのだが、体脂肪率が違うのだろうか。

 ともかく、このままだと持ち上がらないので今度は地面に同じ念を飛ばす。

 地面が50センチほど隆起してくれたので、あとは自力で持ち上げて、どうにか吊るすことに成功した。その際、リーダーオークが超絶な痛みで目を覚ましたが、気絶させた手榴弾をまた飲ませて再び気絶させた。その間にも肩の再生が始まっていた。ピアスみたいな肉と金属の分離が望ましいが、どうだろうか。まぁ、最悪、金属が肉に付着したところでまた無理矢理引き剥がして、再生させれば良いか。


「……う、ん?」


 リーダーオークのけたたましい悲鳴にまず、東洋風の女が目覚めた。すかさず手刀を首筋に当て、第2のリーダーオークみたいなことをする。あと、個人的興味もあって、片足をあげて、衣服の中身をチェックした。

 ピンクのもも引きが見えた。いや、ひざが見えるから半股引(はんだこ)か。

 てっきりパンツだろうと思っていただけに、何か感動した。

 若狭さんの方もチェックしておく。こっちはパンツだった。今どき珍しいイチゴ柄の。

 思わぬ収穫に対し、両手を合わせてしまった。信仰心は欠片もないが、ラッキースケベの神様にだけはお祈りしてもいいかな、と思った。存在すれば、の話だが。

 何はともあれ、実際に思わぬ刺激を受けて、精巣がフル活動し、新しい精子を産み出したのは実感できた。なぜなら、先程のロケットランチャー攻撃でちょっとばかり疲れていたのが、心身ともにハッスルハッスル♪ な状態だからだ。


 何食わぬ顔を装って、最後に若狭さんを起こす。

 匂袋を嗅がせる、平手打ち、揺さぶりの選択肢が浮かんだが、妥当な揺さぶりで手を打った。

 優しい? とんでもない。

 他のふたつの方法は、若狭さんが何か失敗したときのお仕置きにでも用いよう。そう思った上での判断である。


「エッチなことはしなかったのですか?」


 したいのは山々だが、使用人に手を出すのは最終手段かな、と思っている。

 まだ冒険の極初期だと言うのに安易なルートに流れると、エロゲーでいうところの『遊びのつもりがまさかの妊娠! 責任をとっての結婚エンド』みたいなオチしか待っていないような気がする。

 それで済めばまだ良いが、親父がねぇ。多分、フルパワーでぶん殴られて、首の骨が折れての死亡エンド……っていう線も充分考えられる。というか、こっちが本命じゃね?

 というわけで、パンツのチェックだけはした、とだけ言って、若狭さんの反応を見てみる。


「え~、フトシさまの意気地無し!」


 ひどい言われようである。軽く無視することにして、スタンバイ状態のエレベーターに乗り込んだ。


 ☆


 底の見えない螺旋階段からある程度は想像していたが、エレベーターの降下は長かった。

 そこで、俺は若狭さんに疑問をぶつけた。


「そういえば、さっき、ステータスカードを閲覧したんだ」

「はい」

「人類の敵って称号で引っ掛かったんだよね。これって、人間が俺を見かけたらなりふり構わず警戒するって意味なんだろうけど、若狭さん、そんな素振り、ないよね。だから、若狭さん、何者なのかな?」

「妖狐だとおっしゃったではありませんか、フトシさま」

「妖狐ってキツネのお化けってことだよね」

「簡単に言えばそうですが、詳しく言えば、狐が生前長い時間生きまして、死後、お化けになると妖狐となります」

「お化けになる、ということは何か未練が?」

「はい。実はある人と情を通じるお約束をしていたのですが、生前の命では力を得るには短くて、お化けとなって力を蓄えているうちに今度はある人が別の方と結婚をなさいました。並みのお方なら私が取り憑いて結婚を破棄させようとしたのですけれど、出来ませんでした。あろうことか、その方は嫉妬に狂った私を捕まえて、その方の専属使用人として身の回りの世話をするように命じました」

「へー、それは災難だったねぇ」

「それが、そうでもなかったのですよ」

「どういうこと?」

「確かに私は初恋の人をフトシさまもよく知る人に取られました。でも、産まれてきた子の世話を与えられたときはとても幸せでした。私は甲斐甲斐しく世話をし、その成長を見守り、新しい糧を得ました」

「それは良かったねぇ」

「ええ。その人が高校生活に入り、異世界に飛ばされるまでは」

「そこは俺の責任じゃないだろう」

「ええ、わかっています。でも、フトシさまはキチンとお帰りになりました。ですから、私は今度こそは離ればなれにならないように主従契約からでも良いので結ぶことに同意したのです」

「ん? 俺の成長が見られない期間はどうやって糧を得ていたの?」


 筆頭使用人である若狭さんの熱い思出話はさておき、ちょっとした疑問が脳裏に引っ掛かった。

 すると、この妖狐、バツが悪そうな顔をしつつ、モジモジし始めた。


「奥さまと一緒に旦那さまの生気を頂いてました。初恋の人の味は格別です」


 いや、それは生気と違うだろ。絶対、精のつく方に違いない。が、マジレスはすまい。

 まぁ、久しぶりに出会った親父の顔の頬がこけていたことだし、真実なのだろう。

 そういえば、母上はゲームの中ではリリスと言う名のサキュバスだったか。

 ……。

 あれ?

 若狭さんが妖狐なのはゲームの中での話じゃないのか。

 若狭さんはどっちの環境でものを言っているのだろうか。


「フトシさま、ご機嫌がよろしくないのですか?」

「この称号だが、適用はリアルでもアリなのか?」

「ハイ。恐らくですが、リアルの人々はフトシさまを本能的に警戒するはずです」

「俺の家族は皆平気だったな。リトルグレイはそもそも人間ではない。なら、俺らの家族ってーー」


 今、疑惑の泉からポコポコと湧き出る「?」に対し、若狭さんは抱擁をしてきた。


「私の口からは全てを教えるわけにはいきません。しかるべき時が訪れたら杏餡さまが全てを打ち明けるであろうと思います。ですから、フトシさまは前を向いて歩むべきです。

 どんなときでも裏切らない私がついていますから、どうか、私のわがままを聞いてください」


 うるっと零れ落ちる涙目でそう言われては、黙るしかない。

 まっこと、計算された行動なのか本心なのか、女心は掴みづらい。

 しっかし、終始、相手のペースというのも、男としてはカッコがつかない。

 というわけで、若狭さんの顎をグイッと引き寄せると、その美少女の唇と俺の唇を重ねておいた。

 少し驚いた若狭さんであったが、親父の生気を抜いた経験もあってか、こっちを骨抜きにしそうなぐらいのテクで俺の意識を刈り取りに来る。

 そうならないように、ひたすらチュウチュウ合戦をしていた頃、それは起きた。

 エレベーターが最下層にたどり着き、ドアが開いた。

 待ち構えていた勇者の女たちが、俺らのキスシーンを見て、プチ凍結していた。

 なあに? オークがチューしちゃ、ダメ?

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