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金成太志、帰還する。

 なろう界の万年最底辺ランカーなので、実力は知れています。

 なので、興味本位で覗いた方には申し訳ないのですが、本作に目を通しても時間の無駄です。

 大人しく回れ右(ブラウザバック)をお勧めします。

 金成かなり太志ふとしという男がいる。

 当時、中肉中背で凡顔のごく普通の少年だったが、20年前の学園異世界消失事件を境に、知り合った宇宙人とともに宇宙を旅し、つい最近、帰郷した。



 俺は電話をかけた。もちろん、家に。

 だが、電話の端にセロテープで軽く止めておいただけのメモ用紙は20年の歳月のため、かなり劣化しており、俺はところどころ擦り切れて判別しにくくなった数字に対し、子供の頃、必死になって替え歌に変換して憶えた歌の記憶を頼りにダイヤルを回した。


『もしもし、どちら様ですか?』


 電話の向こう側から、若い女の声が聞こえた。

 俺はとっさに昔の記憶をさかのぼらせたが、当時の俺専属の使用人が無理に若作りに励んでいても、こんな声にはならないだろう。となると、誰だ?


『冷やかしですか? 切りますよ?』


 若い声の女は最後通牒を宣言した。


『あー、すまんすまん。俺の名は太志。金成太志なんだが』


 今ここで電話を切られると再び同じ番号を入力できる自信のなかったので、慌てつつも名乗った。

 すると、今度は向こう側が沈黙した。だが、沈黙は長く続かず、急にドダバタし始めた音が聞こえてきた。


『ふ、ふ、ふとしなのっ! 今までどこにいたのよ』


 電話の主が若い女から昔よく聴いた懐かしい声に変わった。


『あー、母上、元気か。ま、積もる話はあとにしよう。それよりも着陸したいんだが、着陸可能場所を教えてくれ。あ、それと対空ミサイルを撃たれると困るから、使用人への事前通知はしっかりお願いしたい』


 俺は母親が伝えた座標番号を口頭で相手に伝えた。

 少し離れた場所でこの宇宙船を操作していた彼が親指を立てて、着陸態勢に入ったことを告げる。

 宇宙船は降下した。

 円盤型のよくある宇宙船は、金成家の空き地に無事着陸した。


(明日のスポーツ新聞の一面トップは頂いたかな?)

「ま、可能性はゼロじゃない。でも、どうだろうなぁ」

(どうって?)

「俺んちで降り立ったところで、信憑性に欠けるんじゃないかな。お金持ちの道楽として多少扱われる程度だと思う。夜だったらその円盤光っていて目立つが、今、昼だろ。難しいよな」


 俺がそう指摘すると、船の持ち主であるリトルグレイが少しむくれた。

 ちなみにこのリトルグレイ、くりっとした瞳以外の部分(鼻や口)が無いので、会話は念話で行われる。

 俺はその辺をあまり気にしないせいか、普通にしゃべる。

 リトルグレイには耳ももちろんないが、何故か会話は可能であった。



 宇宙船の向こう側では、両親と筆頭使用人の若狭さん(年齢不詳の婆さん)、その他の使用人が横一列に並んで待っていた。

 言い忘れていたが、金成家は金持ちである。

 どんな商売をしていたかは忘れたが、いろいろと手広くやっていて業績は悪くなかったと思う。

 着陸の際も、日本庭園と思しき広い庭に不似合いな対空ミサイルが設置してあったぐらいだ。

 安全に回すお金があるのなら、今もなお順調なんだろう。


 タラップがおり、まずはリトルグレイから先に降りた。

 彼は手を振り、親しみをアピールしていた。

 次は俺の出番だ。


 まず最初に、父親と若狭さん以外の人たちの目がカッと見開いた。

 無理もない。

 20年の歳月が経過している。当時、中肉中背だった体格もお腹周りを中心に贅肉がたっぷりとのっている。あごや胸板にはもじゃもじゃの毛が生え、ぽきりと折れそうだった細腕もいまや丸太のように太くたくましくなった。


 俺は親父の前に立った。

 親父はいつもの正装姿で腕を組み、どっしりとした体格で待ち構えている。

 ふんどしが風ではためいている以外は、実に静かな再会となった。

 ちなみにふんどしにマッパであるが、これは金成家の男の正装である。

 当主だけは赤ふんどしである。

 俺はこの日のために、タンスから白ふんどしを取り出し、アイロンがけした。


「太志……」


 親父と俺との間にそれ以上の会話は不要だった。

 俺は親父にハグをし、親父は黙って受け入れた。

 次に、母親との挨拶だったのだが、その前に風呂に入るよう勧められた。

 若狭さんいわく、かなり臭うとのこと。


 外で働いている使用人用の風呂を借り、旅先の垢を落とすことにした。

 俺の臭いを無言で受け止めた親父と一緒に。

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