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幕間
彼の独白――
「おかえりなさい」
その言葉に戸惑ったことを覚えている。
「あれ、なんでそんな顔をしてるの?」
「……あ」
「ご飯、できてるよ」
にこりと笑みを浮かべる彼女。
温かい料理の香りがした。こんな存在が、あったのか……
戸惑いながらも、俺の次の言葉を待ってくれる。
「……ただいま」
何を話したらよいか、迷いながらもようやく絞り出した。
こうして人と話すのはいつ振りか。
「はい、おかえりなさい」
先程よりも更に笑顔を向けてくれた彼女。
俺に、こんな笑顔を向けてくれる人間はいなかった。
こんなに温かいものがあったのか……
これが自分の元を離れることは、、、考えられない。