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ミミナリ  作者: 三宝すずめ
3話 資格剥奪
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プロローグ

 本格的に冬が近づいてきた。


 よく晴れたある日、いつもの如く魔女に呼び出され、お屋敷を訪ねた海里。「出かけるからついてこい」と、袖を通したこともないような立派な服を宛がわれる。


 当の海里は状況に困惑をするも、ナナの様子や先日聴かされた妖の話が気になって仕方がない。この日のかなえの姿は、いつになく緊張をしており……



ある人の苦悩――



 幼年期を過ぎて、『目がいいね』という言葉が決して褒め言葉でないということを知った。


 綺麗でしょ、と差し出された花を見ても何とも思わないのはいつものことだ。いや、むしろ世間がいう色鮮やかさは眼に刺さる。汚いとは思わないが、見ていてそこそこ不快だった。


 これでも人前に出る職業だ。綺麗だと勿論返答をしている。だけど、渋面を切っているのがいけないらしい。大抵は一回こっきりでそれ以後、自分には花を持って来なくなる。それで助かったような気もしているのだが、どうやら世の大半の人はアレが綺麗に見えるらしい。自分としては枯れかかっている草の方がよほど綺麗に眼に映る。


 はて、と思った。


 自分は細部に渡ってものを見ている。それはもう、人が気づかないディティールにまで気づいているのだから、恐らくは間違いがない。


 だからこそ疑問に思う。果たして、自分は他人と同じ色を見ているのだろうか? この目玉は、真逆とまではいかないが、世間の審美眼とは随分とズレているらしい。世間の美しいものは、私には醜く見えて仕方がない。


 それでもこれまでやってこられたのは、綺麗に見えずとも、綺麗と口にすることはできるからだ。子どもの頃から、人と違うものを見ているのではないかと思っていたが、口にする言葉は人と同じくしているので、何が違うかがさっぱりわからない。


 ああ、なるほど――と、一人呟いて柏手カシワデを打ってみた。


 とどのつまり、他人の認識に合わせることも、視界を明け渡すことすらも、大したことではないってことだ。


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