プロローグ
その少年は、すべてを否定した。
生まれてすぐ、親と言う存在を否定した。
祖父母を否定した。
他人を否定した。
人類を否定した。
動物を否定した。
世界をも否定しようとした。
遂には、自分が生きる事さえ否定しようとした。
その時、1人の少女と出会った。
その少女は、少年のすべてを肯定してやると言った。
お前がいくら他の何もかもを否定しても、
他の何もかもから否定されても、
私は、お前の事を肯定してやる。
そう言った。
少年はその少女を否定し続けた。
何を言われても、何をされても、ただただ否定した。
だがその少女は、少年が何をしても、どんなに酷い事をされても、ただ少年の側にたち、ただ少年の存在を肯定していた。
その内に、少年は気付いた。
ああ、こいつは違う
こいつは否定できない人間だ
いや、否定してはいけない人間なのだ。
こいつは、俺にとって
必要な人間だ
自然と頬を伝った少年の涙を拭い、少女は言った
安心してくれ
これからはもう、君は泣かなくていい
私が泣かせない
だから、今は思いっきり泣いていい
今までの苦しみは、全部私が受け止めてやる
君は、私が護るから
ここ物語は、この世のすべてを否定し続けた少年と、少年をただ肯定し続けた少女との
ささやかな、戦いの物語である。