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序章:ユメ
―――聞こえますか?
薄暗い石室が見える。
―――私の声が聞こえますか?
唯一の光源は地面に描かれた五芒星。
―――私の姿が見えますか?
その中心には少女がいた。
―――貴方に届いていますか?
『………キ』
透き通る海を思わせる、深い蒼の髪。
―――私の願いが届いていますか?
『……ツキ』
吸い込まれそうなほど澄んだ、蒼の瞳。
―――もし、届いているなら、応えてください。
『……アカツキ…!』
綺麗だと思った。
―――この世界を、救ってください。
応えたいと思った。
でも。
―――勇者様。
……………この一言で、言葉が出なくなった。
『いい加減に起きろ!2年A組赤月静也!』