「国王謁見」
桜がセイと出会ってからしばらく経った。
セイは本名をセイドリックというらしいというのは後からジルコに聞いたこと。
あれから桜は毎日セイの下へ向かった。
朝起きて、朝食を食べると図書室へ向かう、その足でセイの元へ向かう。
偶にセイの作ったお菓子を食べたり、紅茶を飲んだりしながら過ごした。
夕方になれば自室に戻り、夕飯を食べる。
同じく夕飯を食べた優希が部屋に来て話す、のち寝支度を済ませると眠る。
という毎日を繰り返していた。
優希のようによく話す訳ではないけど、無口というわけではなかった。
セイは読書もするようで、桜とも話が合った。
桜にとってセイの落ち着いた雰囲気は居心地が良かった。
「明日、桜が国王様と謁見することになった」
優希がそう言ったのはいつもの様に食後に桜樹の部屋へ来た昨夜だった。
朝食後、ジルコが持ってきた服に着替える。
「いつものものと違うのね」
「はい、国王様にお会いになるのですから」
ジルコの持ってきた服は水色の下地に小さなピンクの花が散りばめられているロングスカート。
いつもはもっと動きやすい服を着ている。
「さあ、サクラ様こちらへ」
そう言ってジルコが促した先は鏡台。
髪だけでなく化粧もするらしい。
「サクラ様はお綺麗ですから、すぐに終わりますよ」
嫌そうな顔をした桜を宥めるようにジルコはそう言った。
桜は化粧が嫌いだった。
息苦しく感じるからだ。
化粧はほんとに薄く塗られていて、思ったよりは息苦しくなかった。
こんなに薄いのならしなくてもいいじゃないかと、桜は心の中で愚痴る。
髪は後ろの肩辺りで緩くひとつに纏められていた。
髪を纏める大きなリボンは白に近い水色だ。
結局、部屋を出たのはそれから一時間後。
いつもなら、もうセイの所でのんびりいている時間だった。
ジルコの案内で国王の元へ向かう、特に緊張はしていなかった。
「サクラ君、君には迷惑を掛けたようだね、済まなかった」
国王は優しそうな人だった。
「今回君を呼び出したのは、君に学園に通って欲しくてね、どうだい?」
「…ありがとうございます、国王様ぜひ」
桜はは笑顔を浮かべ王言うが、ただ、お願いがあります。と続ける。
「私は、高等部3年からでお願いします。優希は1年生ですので学年は変わりますが…」
「……構わないが、編入試験はかなり難しいぞ」
「そのことに関しては問題ありません、ちゃんと試験を受けるつもりなので」
桜が笑顔のまま言った言葉に国王は驚いた表情を向けた後、関心したように頷く。
「そうか、そんなに自信があるなら構わない、もういいか?」
「いえ、もう一つ。セイを…セイドリックを私と一緒に3年生に編入させてくれませんか?」
今度はさっきよりもはっきりと驚きの表情を浮かべた国王。
傍に控える大臣たちの一部は嫌悪の表情を浮かべている。
「…君は、あの子の友人かい?」
「はい、せっかくなので一緒に通ってみたいと思いました。」
国王はそうか。とつぶやいたまま口を閉じる。
セイと関わっていた桜が気に喰わないのか、睨んでくる大臣の視線を感じながら気づかないふりをする。
「わかった、セイドリックも学園の編入試験を受けられるよに手配しよう」
「ありがとうございます」
「あぁ…もう下がっていいぞ」
桜は深く頭を下げると、踵を返した。
出る直前、ありがとうと呟く国王の声が聞こえた気がした。
「セイ?」
「…っ!…サクラ!」
その後、桜はジルコにひと声かけ、そのままセイの元へ向かった。
しかしセイと会ったのは森に入る少し手前。
まだ、王宮の建物が見える位置だった。
「セイ、どうしたの?」
「…いや、その…」
セイはいかにも何もありませんでした、と言う雰囲気の桜に言うのをはばかる。
セイはいつも来る時間に桜が来る気配が全くないから、心配になってここまで出てきたのだ。
だが、桜の様子を見ていると自分が心配し過ぎなだけのような気がした。
「ふふ、変なセイ」
桜の浮かべるいつもの笑み。
それに安心しながら、釣られるよに笑った。
「今日はね、セイに面白い話を持ってきたのよ」
そう言って桜はさっきの国王との話のことを、楽しそうにセイに話した。