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「べットの上で

目が覚めた。



目に写ったのは見慣れない煌びやかな天井。


自分の部屋ではないことを思い出して、(さくら)は数日前のあの日を思い返した。







桜の幼なじみは所謂ハーフでダークブラウンの髪と透き通るような蒼い瞳のきれいな美少年だ。


そんな幼なじみの隣に立つ桜も負けず劣らずの美女だ。


腰まで伸ばした艶のある黒髪、黒曜石のような黒く大きな瞳、実年齢より上に見られがちな桜は大人っぽいまさに美女なのだ。



あの日、桜はいつものように幼なじみである神道優希(しんどうゆうき)と一緒に学校を帰っていた。


しかし、当然のように優希の家の前まで付いてくる女達が珍しく、そう珍しく別の道から帰って行った。


桜によく懐いている優希はそれを気にすることなく、桜に話しかけた。


桜も、いつものように相槌をうつ。


しかし、それも長くは続かない。


桜は違和感を感じて立ち止まったのだ。


優希もそれにつられるようにして歩みを止めた。



違和感の正体はすぐにわかった。


むしろ今まで気づかなかったことがおかしいくらいの異様な光景。


あたり一面"真っ黒"に染まっていた。



暗いわけではない。


優希と自分の姿ははっきりと確認出来るのだから。


それなのにあたりは黒一色。


それ以外の色は存在しない、不思議な空間にいた。



「何故」



桜の言おうとしたその言葉は、しかし口に出されずに終わった。


いきなり飛び込んできた光に目を瞑ったのは一瞬のこと。


視界がひらけて最初に目に飛び込んできたのは、赤、青、薄緑、黄、白のローブを着た怪しい人たち。


そして、薄ピンクのドレスを着たお姫様と赤い鎧を身にまとった女騎士。


勿論、最後2人は桜の予想である。



「ようこそ勇者様、スペサルテイン王国へ」



お姫様が微笑みながら話しだしても、桜は辺りの観察を止めなかった。



「勇者?それにスペサルテイン…って」



石造りの壁、床、天井。


窓はなく光源は壁や天井にはめられた光る石。



「此処は勇者様が今までいた世界とは異なる世界ですわ。私達の世界を救って欲しくて、勇者召喚陣で喚びましたの。どうか私達を助けて下さい」



出入口はローブの後ろにある上り階段のみ。


おそらく此処は地下である。



「助けてって言われても、僕達に何をすれば」



桜は観察が終わったので、やっとお姫様に目を向けた。



「最近、魔物の以上発生が多発していますの。きっとこれは封印していた魔王が蘇ったのです。ぜひとも勇者様に魔王を退治して欲しいのですわ」



「魔物とか魔王とか僕達に倒せるなんて思えないんだけど」



「大丈夫ですわ、これから"白泉(しろのいづみ)"に入り勇者の剣を抜いていただければ、勇者の力が覚醒します」



「…そうなんですか」



優希は納得していなさそうな声で頷いた。



「ところで」



桜の凛とした声に視線が集まる。



「あなた達は誰ですか」



その言葉でここにいる全員が自己紹介をしていないことを思い出した。





桜の予想していた通りあの2人はお姫様と女騎士だった。



お姫様の名前はティアナ・スペサルト第二王女で優希と同学年の17歳らしい。


桜が確認した所、1年365日の4つの季節で出来ているそうな。


ただし、前の世界が秋だったのに対し、今は春。


桜の誕生日の少し後だ。



女騎士はクリサム・コーラル。お姫様の近衛兵だという。



ローブの人たちは"ギルド"と言う組織の"帝"という"高位ランカー"らしい。


またその説明は追々するとのこと。


この時には説明されなかった。



まあ、そんなこんなで自己紹介を済ませ。


桜達は"白泉"というところへ向かった。



"帝"達は桜達に危険がないことを確認したから、ということで帰っていった。





「ここが"白泉"です。泉の中心に刺さっている剣が、勇者の剣(エクスカリバー)ですわ」



神秘的。


桜はポツリと呟いた。


優希もそれに頷き返す。


ありきたりながら、その場所はまさに神秘的と言う言葉が当てはまった。



エクスカリバーといえばアーサー王伝説。


読書が趣味の桜は当然のように頭に物語を思い浮かべた。



勇者の剣(エクスカリバー)は召喚された選ばれた勇者にしか抜くことができないという言い伝えですの。勇者となる素質が無いものが召喚されることもあるとか、でもきっと優希様なら大丈夫ですわ。さあ、泉の中へ」



優希は引き寄せられるように泉の中へ入っていく。


桜はそれを目の端に捉えながら泉の水を掬う。


水はこれ以上ないくらいに澄んでいて、触れているだけで心まで洗われるようだ。


体が熱くなった気がする。



「ユウキ様!さすがですわ!これで優希様が正真正銘の勇者様ですわね!」



お姫様の声で意識が戻った。


視線を優希に向けるとその手には一本の剣が。



「優希おめでとう、ぜひこの世界の人達を助けてあげてね」



嬉しそうに頷いた優希の頭を撫でる。


その目を見て私はピタリと手を止めた。


優希は当然不思議そうに私を見る。



王宮に案内すると言って歩き出したお姫様の後ろ姿を見た。



私の意識はそこで途切れている。

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