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二回目」

桜がギルドカードを作ったのは一昨日のこと。


今日、桜はセイと一緒に2度目のギルド訪問を果たした。



「こちらがサクラ様のギルドカードになります」



名前:サクラ

ギルドランク:G

加入ギルド:努力と才能



「では改めまして」



微笑みながらそう言ったフィアに視線を向ける。



「ようこそ、ギルド『努力と才能』へ。そのカードに魔力を流せば、サクラ様は正式なギルド員となります」



そう言われて桜はカードに魔力を流す。


少しして流すのを止めると、そこには情報を隠すように浮かぶひとつの絵。


撫子の花と交差するように描かれた一本の剣、コレはこのギルドのシンボルマークだ。



「持ち主にしか、ギルドカードを使うことが出来ません。魔力を流さない限りそのカードが誰のものか判断するのは難しいです。無くすとなかなか見つからないので気をつけてくださいね」



ありがとうございます。


そう言おうとした声は、桜を呼ぶ声に遮られて、掻き消された。



「よお、嬢ちゃん。ギルドカード貰ったのかい?」


「ええ、たった今受け取った処です」



現れたのはバルド。


静かとはいえない、むしろ騒がしいと言えるこのギルドで、それでもバルドの低く太い声はよく響いた。



「そうかそうか…嬢ちゃん、今から暇か?」


「特に予定は無いけど」



そう言って桜が見たのはセイ。


予定がないとはいえ、連れがいるのだ。


そう簡単に暇だとは言えなかった。



「あ?何だこのにーちゃん、今回はあの坊主じゃねえんだな。浮気か?」


「…優希ともセイともそういう関係じゃありません。幼馴染みと友人です、変に勘ぐらないで頂戴」


「がはがは、悪かったな嬢ちゃん。んで、お前はセイっつうのか」



がしがし、と桜の頭を撫でたバルドは満足すると、セイの方へと顔を向けた。


いきなり声を掛けられたセイ。


それでもすぐに反応して頭を下げる。



「…貴方が学園の教師だという話は桜から聞いたことがある。…今度、桜と一緒に編入試験を受ける予定のセイドリックだ。……よろしく」


「セイドリック?…そうか、なら、お前も付き合ってくれ」


「付き合う?そう言えばバルドさん、何の用事で私に話しかけたの?」



何かに納得したような表情を見せるバルドに桜はそう問いかけた。


その言葉に反応してニヤリと笑ったバルドの顔は、まるで悪戯を思いついた子供のように、楽しげだった。






「嬢ちゃーん。おもいっきり来いよー。俺に勝ったらAランクだー」



桜達がバルドに着いてやってきたのは、ギルドの所有する闘技場の1つ。


何故か優希と親しく、優希が勇者だと知っている彼は、幼なじみであり、同じ召喚された者である桜の実力が気になっていたらしい。


かなりの高ランカーであるバルドは推薦状でAランクの昇級試験を受けさせるくらいの地位は持っているらしく、早くランクを上げたいと思っていた桜にとって都合がいい話だった。


もし負けても特になにか困るわけでもないので、あっさりと承諾した。


桜が終わったらセイともやることになっている。



「まあ、勝てるとは思わないけど、頑張らせて貰うわ」



桜は渡された剣を構える。


元々桜は剣道の全国大会に出場、優秀するほどの腕の持ち主だ。


剣の扱いには、それなりに慣れている。



「さすが、見覚えの無い構えだな」


「それなりに実力はあるつもりです」



睨むように、バルドを見据える桜。


がはがは、と笑った後、セイに視線を向けた。



「…コインが落ちたら始まりだ」



そう言うとセイは高く高くコインを弾く。


セイが離れた頃には刃のぶつかり合う高い音が響いた。





高い音を鳴らしながら受けて、避けて。


桜は防戦一方になっていた。



「何かの型、だな。実践を踏んだ経験はないっつう動きだなあ」


「…………」



なんてことないように、剣を動かしているバルド。


桜は必死に防いでいるように見える。



一際高い音が鳴ると桜は大きく飛び退いて距離を取る。



「何だよ、こんなもんか?面白く無いなあ」



大きな声を出すいつもの笑い方ではなく、面白がるようにニヤリと口角を上げた。


ソレを無言で見ていた桜は、目を閉じ一度深呼吸をする。


バルドは見ているだけで、攻撃を仕掛けはしなかった。



パチリ、と桜の瞳がバルドを見つめる。


その顔には先程までの余裕の無い顔はなく、だからと言っていつもの微笑みを浮かべているわけでもない。


その表情は純真無垢な少女が浮かべる楽しげな笑顔だった。



「行くよっ!」



そう言った桜は、握り直した剣を左手に駆け出した。



両手で振り下ろしたバルドの剣をいつの間にか逆手に持った剣で止める。


さっきは両手で止めるのがやっとだった腕力の違いに驚くバルド。



「身体強化…部分強化か」


「ご名答っ!」



高い音がなって後ろに下がったのは桜ではなくバルドだった。


しかし、先ほどの桜とは違い距離を空けることは出来ない。


後ろに跳んだバルドとほぼ同時に跳躍し追撃を仕掛ける。



腕を休めること無く攻撃を仕掛ける桜。


さっきとは立場が逆転していた。



「魔法使わないのっ?」



桜の疑問に高い音を鳴らし続ける剣を止めること無く、口を開いた。



「俺の、二つ名は…剣神…だ。魔法は…つかわないっ!」



高い音が響く。



「そ、じゃあ…終わりだねっ!」



バルドの剣を横へ払うと、腹へ蹴りを入れる。


よろけつつも隙を見せず、剣の突きを止める。


ソレと同時に出した右足で、バルドの左足を払った。


足を取らてバランスを崩したバルドは後ろへ手を付きバク転をする。


その時に向けられた背中に、バルドの足を払った時の勢いそのままの右足で回し蹴り決める。



バルドはすぐ傍にあった壁へと叩きつけられた。



がっ!!


バルドの顔の直ぐ側の壁へ今までと違う低い音を立てて桜の剣が刺さる。



その音が試合終了の合図となった。

結局、疲れたバルドを気遣い、生徒の模擬戦は無しになった。


バルドの推薦でBランクの昇級試験を受けた桜。

Sランク昇級試験を勧められてがそれは断った。


その一週間後にはAランクと記されたギルドカードが桜の手の中に。

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