「ギルド
今日、桜は街に来ていた。
優希とギルドへ向かっているのだ。
桜の中に魔力があるのは感知しているので、その正確な数値をはかるのと、ギルド登録するために向かっている。
ギルドカードは身分証明書になるので必要だと桜樹も、思っていたのだ。
「じゃあ、受付の人と話してくるからちょっと待ってて」
優希はギルドについて早々、そう言って受付の方に向かった。
ギルドは酒場のようで、飲食する場所でもあるよう。
桜は、酒の匂いに顔をしかめる。
「ねえちゃん、そんなとこで突っ立ってねえでこっちで一緒に飲まねえか?」
「俺たちがいいこと教えてやるよ」
「ふへへ…色っぽい姉ちゃんだな」
確かに今の桜は、ミニスカート(下にはショートパンツ)に首もとが肩が出るほど広い服(下のキャミソールのひもが見えてる)と、少し露出が多い。
しかし、桜にとってこれが動きやすい格好で、そんな事でいちいち酔っぱらいに絡まれていたら洒落にならない。
桜の眉間には当然のごとく皺が寄っていた。
それも一瞬のこと、桜はすぐに柔らかい笑みを浮かべる。
「ごめんなさい、ここには用事があって来たの。またの機会があればその時にするわ」
ふふ、と笑いながらそう言うと目の前の三人組だけでなく、それを見ていた周りの男たちも顔を顔を赤くする。
いわゆる色気ただ漏れ、だ。
「がはは、おまえ等この前もナンパして痛い目みただろう。ほんと懲りねえなあ、こいつはあの時の坊主の連れだぞ」
優希はやくこないかなぁ、と桜が思っていると、後ろからそんな声が聞こえてきた。
茶髪の大柄な男性。
背中には桜樹の背丈ほどの大きな剣を背負っている。
「嬢ちゃん黄金色の疾風の連れだろ?」
「…その、黄金色の疾風って……」
「んあ?あいつだよあいつ名前なんだっけな、ゆ、ゆう…?あの、受付にいる奴って、来たな」
その言葉につられて桜も、受付の方をみる。
そこにはちょうど終わったのか、こちらに歩いてくる優希の姿が。
「桜ー。ギルドマスター今出てるって、取りあえず魔力測定とか、すませちゃおうよ。カードはマスターがいるときにまた取りに来てくれって…あ、ベリルさんこんにちは」
「気づくのがおせーよ。おまえな、女の子一人で待たすなよ絡まれてたぞ」
そう言ってベリルはがしがしと桜の頭を撫でる。
「嬢ちゃん、髪サラッサラだなあ、ちょっとさわらせてくれ」
ベリルはそう言うと桜の髪を一房握る。
「えっ?!桜ごめんね、大丈夫だった?怪我無い?」
「大丈夫よ、この…ベリルさん?が間に入ってくれたから」
桜は、髪に触れるベリルのことを全く気にせず微笑んだ。
「この人はベリルさん。僕らが通う予定の魔法学園で戦闘学の講師をしている人なんだ」
「あ?嬢ちゃんも学園の新入生か?」
「いえ、三年生に編入予定です。まだ試験は受けていないから確定してはいないけどね」
なにがおもしろいのか分からないが、そうかそうか、といってがはがは笑うベリルはやっと髪からその大きな手を離した。
「あ、ほら、桜樹。早く行こう」
優希の思い出したような呼びかけに頷きベリルと分かれる。
受付嬢のの案内の元、ギルドカウンターの奥へと通され、一つの部屋へ入った。
そこには2つの台のそれぞれに水晶が一つずつ置かれていた。
「それぞれに片手ずつおいてください。特に魔力を込めたりする必要はありません。手を添えるだけで結構です。」
桜は言われたとおり、手をそっと添える。
桜よりも、優希の方がよっぽど興味深そうに水晶を除いている。
「魔力量が…9000万…。まあ、優希さんの幼なじみですしね、はい。」
ぶつぶつとつぶやく受付嬢。さっき名前をフィアと名乗っていた。
後で聞いてみると一般人、ギルドのCランクの人の魔力の平均が3000万、高等部三年生の平均が2000万、優希の魔力が10億だったらしい。
優希の魔力については現存する誰よりも多いらしい。
「桜の得意属性は水だねー、二番目が風かな?地も強いね」
優希が覗いているのはフィアさんが覗いているのとは違うほう。
こちらの水晶は基本属性四つの中の得意属性がわかるらしい。
大きな青い丸が1つ映っていて、それより小さい同じくらいの大きさの緑と黄色の丸が一つずつ、それより更に小さい大きさで赤い丸が映っていた。
「でも、この大きさなら特に苦手というわけでもありませんね」
よかったです、フィアさんはそう呟いて手元の書類に何か書き込んでいく。
「では、後はこの書類にサクラさんがサインをすれば、後はカードができるのを待つだけです。」
そういって差し出されたのはいろいろと記入された書類。
内容はそんな大したことじゃなくまとめるなら、『あなたが受けた依頼で何があっても、ギルドは責任を持ちません』といった感じだ。
桜はさっとサインする。
「桜、この世界の文字書けるの??」
「ええ、もうなれたから…優希書けないの??」
「………うん。」
「そう、なら、暫くは勉強詰めね、もう直ぐ学園の入試だしやらなくちゃ」
とはギルドを出た後の二人の会話である。