シャボン玉
「ねえ、しってる?」
「なに?」
「シャボン玉ってどうして丸いと思う?」
「さあ……」
「割れにくくなろうとしてるからなんだってさ」
「へえ……」
「……」
「……」
「じゃあ、これはしってる?」
「なに?」
「シャボン玉ってどうしてきれいな色をしてると思う?」
「さあ……」
「この世界にあるいくつもの色の光を映せるからなんだってさ」
「へえ……」
「……」
「……」
「あのさ、しってる?」
「なに?」
「シャボン玉ってどうしてふくらむと思う?」
「さあ……」
「一つにまとまろうとしないからなんだってさ」
「どういうこと?」
「うーん、あまりよくわからない」
「そう……」
「……」
「……」
「……しってる?」
「なに?」
「シャボン玉ってどうして割れると思う?」
「さあ……」
「いくつか説はあるんだけど……」
「うん」
「この世界の力に耐えきれないからなんだってさ」
「へえ……」
「……」
「……」
「えっと……」
「だったら……」
「ん?」
「シャボン玉はどうして空に浮かぶの?」
「それは……」
「せっかくふくらましても、すぐに割れちゃうんでしょ?」
「そうだけど……」
「じゃあ、なんで空に浮かび上がるの?」
「……わからないや」
「きみにもわからないんだ」
「ああ……」
「……」
「もしかしたら……」
「え?」
「ほら、シャボン玉が割れるのって、この世界の力に耐えきれないからでしょ?」
「うん」
「だからきっと、その……。自由をもとめているんだと思う」
「自由?」
「そう。とても脆くて儚い、だからこそ自由をもとめているんじゃないかな」
「ふうん……」
「……」
「……シャボン玉がもとめる自由ってなに?」
「え……」
「もしシャボン玉が自由になったら、どうなるの?」
「……」
「ずっと消えずに、この世界に残り続けるの?」
「……」
「脆く儚くなくなるの?」
「……多分」
「それっていいことなのかな?」
「……」
「……」