第二話
大学への通学の車内で「中東の一国で内戦が始まった」というニュースを見て、私は電車を降り、携帯電話を取り出してその国に派遣されている仲間と通信する。
別に神同士の会話にこのような機械は必要ないのだが、この人ゴミでは携帯で話しているフリをしないと奇異の目で見られる。前は紙と筆を持っていかにも悩んでいる風に独り言を呟くフリをしていた。当時の烏帽子をつけた連中はみんなそうしていたからだ。
「おい、なんでお前のところでまた内戦が始まってんだよ。真面目に仕事してるのか?」
私たちに与えられた仕事は世界平和の実現である。もうかれこれ3,4000年は同じ仕事をしているが、(初めてこの仕事が発令されたのはまだ私が生まれるはるか前の1万年くらい前らしい)一向に進まなない。
「いや、あいつらまた勝手にシナリオ変えて自分だけ楽していい生活しようとするんだもん。長くてもこ
この技術じゃ80年程度の人生なのにさ。」
「そんなの最初からわかってただろ。」
「いや、でもさ、国の一番偉い奴が他国から兵士を雇って自分の国民に向かわせてるんだぜ。想定外だろ。」
「想定しとけよ。」
「お前のところも地震で発電所がイカレてもめてんじゃねぇか。」
「あれはナマズがさぁ…」
「くだらん。黙れ。」
即答だった。
「でも内戦にはならないね。解決もしなさそうだけど。」
「いいのか、解決に手を貸さなくて?」
「とりあえずいろんな運動が起きてるし、もっと彼ら自身で努力したら手を貸すさ。今は原発をなくせとか騒いでるよ。」
「へぇ、俺らはいいけど、なくなったら生活が不便になって結局もめるんじゃないか?」
「代わりにもっとクリーンな、自然の力を使うんだってさ。」
そう言うと仲間は大笑いした。
「それは傑作だな。おたくらでさんざん壊しといて、よく言うよ。自分たちの行為をわかってるのかな。」
「わかっちゃいないだろ。奴らは都合のいいことしか考えないからな。合理的なんだってさ。」
「もう笑えないな。とにかくお互いもっと人に努力してもらわないことには手出しできないからな。」
じゃあな、と言って通信を終えた。
こうして今日も大学へ通いながらこの国の人々の努力を評価しに行く。