114話 「黄金探しの狩人」【後編】
拝啓。
シルヴィア様、お元気ですか。
私です、アルミラージです。
先日、私はシルヴィア様のご助力あり、〈凱旋する愚者〉の皆様のご理解あり、という好意に恵まれた形で、己が目的のためにこのギルドの客員として迎えいれられるということになりました。
そうしてこのギルドの雰囲気にひたって思うのですが――
――このギルドに悪意をもって手を出した過去の自分の甘さを、今現在痛感しております。
私はとんでもないギルドに手を出してしまっていたようです。
クジがてらに仲間の気絶をかける彼らの姿はとても活き活きしていて、輝いていて、いっそ戦慄さえ覚えました。
――ええ、いえ、殺された時も真面目にサレさんには戦慄を覚えたのですが、今にいたってはあの時以上かもしれません。
とにかく、このギルドの方向性が迷子なのにやたらと力強いノリに、正直ついていけるか不安になってきました。
少しシルヴィア様の家に帰りたくなりました。
ええ。
……。
なにかとまた研究にお忙しいとは思いますが、せっかくですのでたまには爛漫亭に遊びに来てください。
では、今回はこのへんで。
ますますの研究の前進を願って。
敬具。
◆◆◆
「決まりましたか?」
「決まった決まった。俺たちはアリスの考えに乗るよ。というかそもそもアリスが決定したことなら従うけど」
「そういわれるとありがたいとも思うのですが……しかし私は長であっても専制的に事を進めるつもりはありません。暗黙的ではありますが、みなさんそれぞれの意見をできるかぎり尊重しようとしているではありませんか」
「まあ、それでうまく行くうちはね」
「それで解決できない齟齬が生まれたら、あらためて私が判断します。だから、うまくいくうちはそのままにしておきましょう」
「そうだね」
アリスとサレはうなずき合って、一旦その話を切った。
「能動的に動く方策があまりない現状で、うまくいったときの報酬がもっとも大きくなるのはこの方法だと――俺は思う」
「はい。それに、場合によってはいくつかの手段の転換に及べるかもしれません」
アリスにはいくつかの予想があった。
一、エルサ王女とその連帯ギルドとの全面対決。
これが今までの経験から考えられる端的な可能性のひとつ。
王権とギルド間権力をかけて争っているのだから、当然と言えば当然だ。
しかし――
二、エルサ王女と利害が一致した場合の共闘の可能性。
アルミラージはサフィリスを止めたい。そしてもしかしたらエルサ王女もサフィリスを止めたいと思っているかもしれない。
自分たちもジュリアスの願いと共に闘争の勝利を目的としている以上、サフィリスを止め、闘争から蹴落としておきたい。
この場合、自分たちだけでエルサ王女とサフィリス王女の二人に個別で渡り合うよりも――
――まずはエルサ王女と手を組んでサフィリス王女を止め、闘争から蹴落としたあとで改めてエルサ王女と敵対するなり取引するなりすれば、労力が削減されます。
その方がギルド員に及ぶリスクが小さくなると、そう判断し、決断した。
だから自分の考えを口に出したのだ。
主にこの二つが考えられるが、事情の違いによってまたその時その時に方策が変わる可能性はあるだろう。
だから、これからは盤面に転がる小さな石ころにさえ注意しておく必要がある。
わずかな変化も、汲み取って考察する必要がある。
そしてなにより、その『盤面』にあがるためのそもそもの条件として――
「――」
アリスがふと顔をあげ、広間に集まっているギルド員たちを見る。
見えないが、顔を向ける。
対するギルド員たちは、皆が揃ってアリスを見ていた。言葉を待っているのだ。
それに答えるように、アリスは最後にあらためて決断を口にした。
◆◆◆
「では、『狩り』といきましょうか」
◆◆◆
「狩りじゃ」
「ハハハ、狩りじゃー」
「久々の狩りじゃあ!」
「最近やられっぱなしだったからな……! こっちから狩るってのは滾るぜえ……!」
まずはナイアス北側歓楽区で〈黄金樹林〉の拠点を見つけだす必要がある。
鬱蒼とした林に分け入って、どこかに隠されたその黄金を探し当てる必要がある。
もしくは、
黄金に光る一本の樹を。
ギルド員たちはそれぞれに身体をほぐしながら、高揚に彩られた好戦的な笑みを浮かべていた。
かの手練れ英傑ばかりの〈戦景旅団〉に勝った『愚者』という名の獣が、自らで意識的に『餌』を探しに、その身を起こそうとしていた。
―――
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