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第5話 始原の泥濘
鋳吹が出て行って数分後。
教室の空気が変わった。
ジメッとした、生臭い湿気。ボロアパートの押し入れのような匂い。
床のタイル目地から、ボコボコと「泥」が湧き出し始めたのだ。
「な、なんだこれ!」
生徒たちが悲鳴を上げる。
泥は瞬く間に膨れ上がり、不定形の怪物へと姿を変えた。
それは沸騰する汚泥のスライム。悪臭を放つ、巨大な粘液の塊。
『……ミツケタ……器……』
怪物はドロリとした「目」で俺を見た。
「ベコール・アクア……!」
鋳吹が言っていた「敵」。それが、こんなに早く現れるなんて。
怪物は触手を伸ばし、出口を塞いだ。
『逃ガサナイ。コノ教室ハ、閉鎖シタ』
クラスメイトたちがパニックになる。
「明星! あれお前の知り合いかよ!?」
剛田が叫ぶ。俺は震えながら後ずさる。
俺一人ならともかく、みんながいる。どうすればいい。




