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第4話 疑惑

 放課後。

 教室に戻ると、騒ぎが起きていた。


「キャーッ! ヒナちゃん!?」


 人だかりの中心で、日向ヒナが倒れていた。

 顔面は蒼白で、まるで生気を吸い取られたようにぐったりしている。


「ヒナ!」


 俺が駆け寄ろうとすると、その場にいた誰かが叫んだ。


「さっき、転校生の子とヒナちゃんが話してるの見たぞ!」

「あの子、なんか怖かったよね……」


 俺の背筋が凍る。

 鋳吹。彼女はヒトではない。そしてさっき、俺を守るために不思議な力を使った。

 俺が昨日感じた、あの「力が抜けて死にそうになる感覚」。あれとヒナの症状は似ている。

 まさか。

 俺は教室の隅にいた鋳吹を睨みつけた。


「お前……ヒナに何をした」

「……え?」

「俺に近づくなって言ってたよな。だから、あいつの生気を吸ったのか!?」


 鋳吹が目を見開く。その表情には、愛する者に疑われたことへの絶望が滲んでいた。


「違う。私はやってない。私はただ、アトを……」

「嘘つくな! 俺を一八メートル縛り付けてるのも、その怪しい力だろ! お前なんか……悪魔だ! 出て行けよ!」


 その言葉は、決定的な刃となって彼女を貫いた。

 鋳吹の肩が、ビクリと跳ねる。

 彼女は何かを言い返そうとして、口を開き――そして、ぐっと結んだ。

 いつも強気で、俺にべったりだった彼女の真紅の瞳が、みるみると潤んでいく。


「……っ」


 まばたきをした瞬間、堪えきれなくなった大粒の涙が、焼けた頬を伝ってボロボロと零れ落ちた。

 教室中の冷ややかな視線など、彼女には見えていない。彼女が見ていたのは、拒絶の言葉を吐いた俺だけだった。


「……わかった」


 鋳吹は震える手で目元を乱暴に拭うと、泣き笑いのような、酷く歪んだ表情で俺を見た。


「アトが、そんなに嫌なら……消えるね」


 彼女は背を向け、逃げるように教室を飛び出していった。

 床には、彼女が落とした涙の跡だけが、点々と黒い染みのように残っていた。


「おい!」


 呼び止めようとしたが、俺の足は動かなかった。


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