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私は誰なんでしょう?
部屋を出て階段を下りると、酒場的な空間へと出た。
「やあ、アンタ!起きて来たのかい!体の具合はどうだっ!?」
そこでやたらとニコニコと愛想のいい、むさい髭のオヤジに問い掛けられる。
昨日、俺が助けた酒場の主人だ。しかし昨日よりも何だか笑顔が怖い。強面に似合わず体の前で揉み手などしている。
「あの後、ぶっ倒れるようにして眠りこけちまうから心配したよ。俺が、かついで二階へ運んだんだ。良く眠れたかいっ?」
「・・・ええ、おかげさまで」
「なんだ、酷い顔だなぁ。二日酔いか?」
「いえ、何だか今、ここにいることが信じられなくて・・・」
「ガハハ、なんだ、まだ寝ぼけてるのかい?」
「ハハハ・・・」
「・・・なぁ。昨日は本当に有り難うよ。俺の名前はゲラルトだ。
是非アンタの名前も教えてもらえないかい?」
・・・・・・。
名前。俺の名前。
「あの」
「ん?何だい?そんな顔をして」
「私は一体、誰なんでしょう」
「えっ」