夢のつづき
チュンチュン、チチチ。
「ん・・・?んむぅ」
朝・・・?朝か。俺の最も嫌いなもの、それは朝。
また一日が始まるのかと思うと、憂鬱になる。
しかし、今朝は何やらいつもと少しばかり気分が違う。
長年蓄積されてきたストレスが綺麗に消え去っているような。何故かそんな気がするのだ。
そう、例えるなら。
酔っ払って道行く人を蹴り飛ばし、強盗に入って全力で逃げ、外道を日本刀で斬り殺しまくり、さらに可愛い女の子にセクハラでもすれば、あるいはこんな気分になるのかも知れない。
さっきまで、そんなような夢を見ていたのだ。凄くリアルな夢だった。まるで、本当に現実であるかのような。
だがもちろんそんな馬鹿なことが起きるはずは無く。
俺は溜息を付く。
見たいなぁ、夢の、続き。
そこでハッと思い至る。
この部屋は、どこかのホテルだろうか?
いや、この木造の暖かな風合いは、旅館?それにしては小さい、殺風景な部屋だが・・・
というか昨日の夜、俺は何をしてたんだろう?自分がこのような場所にいる理由がまるで分からない。
深酒でもして記憶を飛ばしたか。
・・・いや、ちょっと待て。
そもそも、誰だ。
「俺はいったい、誰だ?」
はじけるように窓際に走る。
外の景色からここがどこであるのかを確認するのだ。
木で出来た窓を開けると、眩しい陽光が視界を真っ白に塗り潰した。
やがて光に目が慣れて視界が色を持ち始める。
どうやらここは木造建築の2階のようだ。
眩しさで目を細めながら窓から外の風景を見渡し、呆然とする。
この目に映るのは電柱や道路や自動車ではなく、エルフやドワーフ、石畳の道、中世ヨーロッパ風の建物や城だった。
「夢の、つづき・・・?」