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胡蝶の夢
俺はときおり荒唐無稽の変な夢を見ることがあるが、それが時に剣技の手掛かりとなることがある。
すぐに寝直して続きを見ようと、俺は至極真面目に言ったのだが――
「兄さまったら、眠たいからってそんなバカなこと言って!はやく稽古に行かないとお爺様に怒られるよ!」
正直に伝えた所でこのとおり、あまり本気にされない。なんども同じことを繰り返すうち、妹の静音には俺がめっぽう朝に弱いと思われている。いや実際、あまり強くはないのだが。
「うぬ・・・じいさんに怒られるのは嫌だな。夢も切り殺される直前だったし、続きを見ても得られるものはないかも知れん」
「はいはい。朝餉の用意は出来てるから、早く食べてね、兄さま」
静音はそういって部屋から出ていく。
しかし、殺される夢か・・・自分よりも強い相手から致命的と思しき一撃を受けた状態。しかし実際、どうだろう。深手には違いないが、一歩も動けないようなキズだっただろうか?とはいえそもそも夢の中の俺は戦意を喪失していた。あの状態では勝てるものも勝てはしないだろう。
かと言ってやる気になったところで、あの圧倒的不利を覆すは相当に難しい。
「今日はそこらへんも考えながら稽古に励むか・・・」
なにせ、夢の中のような状況は実際、いつこの身に降りかかってもおかしくはないのだ。




