41/57
影に生き、闇に還る
オレは、夢を見た。とてもリアルな夢を。
深い暗闇の中、オレはレンガ造りの建物から建物へと音も建てずに移動する。
ターゲットはこの先にいる。
見張りのマフィアも多数いるが、音も建てず、ナイフで首を掻っ切って始末していく。
オレに狙われて命があったヤツはこれまで、存在しない。
ようやく、ターゲットのいる部屋にたどり着いた。
慎重に気配を探る。
ターゲットはこの薄壁の向こうで息を殺している。
オレはマグナムが装填された銃を取り出し、壁の向こうの心臓へと狙いを定めた。
とうに引退した身だが、しょうがない。
一度足を踏み入れた闇の社会は、俺を逃がしてはくれなかった。
俺一人なら追手なぞどうとでもなるが、大切な人が出来た今はそうはいかない。
今度こそ。
今度こそ、最後だ。
そんな祈りにも似た想いを呟きながら、俺は引き金を引いた――――