金髪ポニテウエイトレスとビールと、そして闇金
そういえば日本刀?を手に入れたな。
鞘からスラリと抜いて、振ってみる。
一度、二度、三度、四度。
なんだか、初めて振ったような気がしない。刀が手に吸い付き、異様に馴染むような気がした。
まあ、夢の中であまり物事を深く考えても仕方がない。
とりあえず刀を鞘にしまい、物見遊山を続行することにする。
結局、そのまま元いた大通りまで戻ってきた。そこでふと酒瓶を見る。
やばい。酒瓶に酒があんまり残ってないじゃないか。
「酒場はどこだろう」
中世系のファンタジーならどこかにあるだろ。
街中をしばらく彷徨っていると、だんだんと日が暮れてきた。
そのままウロウロしていると、大通りを街の中心へとしばらく歩いたところに酒場を発見。
おお、ここで食事を取ろう。酒も飲もう。
店先から食べ物の香ばしい香りが漂ってくる。そう言えば随分と腹も減った。
ギィと木造の扉を開けて店内へ入る。
少々手狭な印象だが、チラホラ客が入っている。テーブルはそこまで多くない。
そこかしこから楽しそうに話す声が聞こえてくる。
オレは残り少ないカウンター席に滑り込む。
しばらくするとウエイトレスがこちらにやってきた。
その顔を見た瞬間心臓が跳ね上がり、その体に目が釘付けになる。
可愛い!そこらへんのアイドルなど話にならない。
ひょっとして未成年だろうか、随分と若く見える。目元がパッチリだ。
チャームポイントはドラキュラを連想させる、長めの八重歯だろうか。
そして長めの金髪を後ろに束ねて結んだ、いわゆるポニーテール。
さらにスタイルが細いのに体がエロい。
エプロンをかけたメイドっぽい給仕姿でおっぱいが大きい。
短いスカートから除く太ももがムチムチだ。かがむとパンツが見えそうだ。
ジロジロ見ていたら、ウエイトレスと目が合った。ヤバい。
なんと、屈託のない笑顔でニコリと微笑んでくれた。
やっぱり八重歯が可愛い。
「お客様?お決まりでしょうか?」
ニッコリ笑顔のウエイトレスに、俺は店長のおススメセットを注文して大人しく待つことにした。
そこかしこから楽しそうな声が聞こえてくる。客がウエイトレスをソアラと呼んでいるのを耳にした。
ソアラちゃんか。
ソアラちゃんの太ももを拝みつつ、料理を待つ。
スレンダーな体に似合わずスタイルは抜群で、胸元のふくらみが物理法則に逆らっている。しゃがめばスカートがふわりと揺れて、こっちの理性もゆらぐ。テーブルに料理を置こうと身を乗り出すたび、後ろ姿がプリプリだ。夢最高。
待つ間オレは、ソアラちゃんが健気に働く姿を応援しながら、客の喧騒に耳を傾けていた。
「この店もこれで最後かぁ」「寂しくなるな」「昼頃、武器屋の親父が盗みに入られたらしいぞ」「マジかよ、また蛇凶の奴等じゃないのか。くそっ、あいつら好き勝手しやがって」「ソアラたん可愛いよハアハア」
最後のは俺の声だ。
ほどなくして、ついに料理と酒がやってきた。
「うんめぇうめぇうめぇ」
酒場のカウンターでガツガツと鳥の照り焼きのようなメシと米をかきこむ。
肉を噛むとジュウジュウとまるでフルーツのように肉汁が溢れてくる。
なんて美味いのだろうか。
この店のオヤジは三ツ星レストランの料理長に違いない。
そして発泡性なのだろうか、シュワシュワと音を立てる一緒に出てきた黄色い酒で、料理を喉の奥に流し込む。
「ビ、ビールだぁ!」
口内の油を洗い流す爽快な感覚。
そして喉を包むシュワシュワとした強い刺激。
そして脳天へ突き抜ける快感。
感激で咽び泣く。幸せだ。俺は今、間違いなく幸せだ。
ガツガツと料理をかきこみながらビールを何杯も何杯も流し込んでいると、店主であろう強面の髭面オヤジが二カッと笑ってカウンターの向こうから話しかけてきた。
「ずいぶんいい食いっぷりだねぇ、アンタ。それにそんなに美味そうに酒を飲むやつを初めて見たよ」
そりゃあ美味いからね。
「どーもどーも!これからも通わせてもらいますよ!」
この夢は次の瞬間にも覚めちゃうかも知れないけどね。
すると、オヤジが笑いながらもちょっと複雑そうな顔をした。
「いやぁ、そう言ってもらえるのはありがたいんだけどね、実は今日限りで
店を畳むことになってるんだよ」
「えぇ?・・・それはまたどうしてですか?」
「いや、それがね。料理の腕には自信があるし今は店も繁盛してるんだが、資金繰りが厳しかった時期にかなりタチの悪いところに金を借りちまってね」
うん?借金?
髭オヤジは苦笑いしながら続ける。
「何年も何年も頑張ってね借りた金額分はとっくに払い終わったんだが利息が膨らんじまって完全返済がちょっと難しいこんな法外な利息は国も認めてないから本当は返す必要はないんだが金の為なら人殺しも平気でするような奴等だから何をされるか分からないでもある日いきなり奴等が来て言ったんだよすでに元本の数倍の金は払ってるしこの店を明け渡すのを条件に利息分をチャラにしてやるって今日の営業時間が終わればこの店を捨ててもっと治安のいい街を探してやり直さなきゃならないそんな街があるのかどうかわかりゃしないけどねウフフフ…」
うわぁ・・・何かいきなりファンタジーじゃ無くなってきたんですけど。
相手が初対面にも関わらず、まくしたてるように事情を説明する髭オヤジ。
よほど追い詰められているのか、宙空を見つめて目の焦点が合っていない。いわゆるレイプ目だ。どうせなら美少女とチェンジしてくれないだろうか。
こちらがドン引きしてるのに気付いた髭オヤジは目の焦点を取り戻し、苦笑いをして溜息を一つ。少し間を置いて続ける。
「最後の最後にそんなに美味そうに飲み食いするヤツと出会えて嬉しいよ。アンタにしてみりゃ最初で最後になっちまったが、今日はゆっくりしていって・・・うん?何だ?」
髭オヤジが訝しげに店の出入り口を凝視している。
そちらを見てみると、柄の悪そうな男達がぞろぞろと店内に入ってきていた。
10人程はいるだろうか。皆、顔や腕にタトゥーのような彫り物をしている。
全身、革服の黒ずくめだ。
おおう、アウトローだ。マジモンだ。マフィアだ。