第9話 真相
「ふぅ。とりあえず終わったな。あの頑丈さなら死にはしないだろ」
鋼鉄の勇者バートランドとの戦闘を終え、俺は『世界は俺を中心に回る』を解除する。
勇者戦で少し疲れているが、俺には話さなくてはならないヤツがいた。
「……」
「おーい」
「は、はい。何でしょう?」
バートランドがあっさりやられてしまったことに驚くゴンザレス国王。
そのアホみたいに開いた口から聞き出したいことが、俺には沢山あるのだ。
「ゴンザレス国王、話を聞かせてもらってもよろしいですかな?」
「は、はい、全部、全部話しますので。い、命、命だけはぁぁぁ」
さっきまでの横柄な国王はどこへやら。
俺はゴンザレス国王にゆっくり、落ち着いて、わかりやすく説明してもらうのだった。
ゴンザレス王国は世界安全支配機構の理念に賛同しなかった国。
理由はトールという若者がギフトを持った途端にいきなり出て来て、世界を支配したなんて事実が元々気に入らなかったらしい。
それで勇者を召喚して、「悪い魔王からこの国を救ってください!」とか言ってバートランドを騙し、俺を倒してもらうことにしたらしいのだ。
いきなり世界を支配した若者が調子に乗ってると思う、確かにわかるぞ。
俺でも知らない子供がいきなり出て来て「俺がこの国を支配するのだ!」なんて言い出したら、ちょっと大丈夫? って思うもんな。
でも、それでいきなり勇者を召喚するというのはどうなんだ? 俺を殺して、その後はどうするつもりだったんだろ。
「申し出とか国を渡すって最初話してたけど、それは何?」
「いや、あの……それは……」
「悪いけど、ちゃんと答えて!」
「ひぃやぁぁぁ!!!」
俺は返事を言い渋るゴンザレス国王にイライラして、近くの壁を『吹き荒れる風』で消し飛ばして見せた。
こういう脅すやり方は好きではないが、力を見せるというのは効果あり。
ゴンザレス国王は震えながら、会ってすぐに話していたことについて教えてくれた。
「……う〜ん、エヴォル商会か〜」
「何悩んでるの、トール。終わった?」
「あっ、サリナ!」
ゴンザレス国王に事の真相を全て聞き終えたところに、城から逃げ出していたサリナが帰って来た。
騒ぎが収まって帰って来たのだろう。ホント都合のいいヤツ。
俺は文句を言いながら、ゴンザレス国王から聞いたことを、俺たちの現状も踏まえてサリナに話す。
昔ギフトを与えられた俺たちは思いがけず、多くの国を力でねじ伏せてしまった。故意にやったわけではないけど、流れでやってしまったのだ。
直接手を下して支配した国と世界安全支配機構の理念に賛同してくれた国を合わせると、今俺たちはバラムの約60%を手中に収めていると言ってもいい。
世界を支配し、安全に管理しようと考えた俺たちだが、問題は色々山積みなのである。
5年という短い時間でやってしまった世界支配は、23歳の無知な俺では手が回らないことが数多く出て来たのだ。
自分たちで作ったばかりの国、セントドグマの内政について考えるのがやっとな俺は、他国との政治や流通などに目をやる時間が無く、挨拶などで顔をだすぐらいで、ほとんどのことは役員たちに任せていた。
魔王が支配してるはずの国々なのに、管理が疎かになっていたのだ。
そこを狙われたのだろう。
ゴンザレス国王から聞いた『エヴォル商会』という組織は世界安全支配機構の下請け会社だと自称し、ゴンザレス国王に他国の支配権を譲ると交渉していたらしいのである。
欲に塗れたゴンザレス国王は、自国の民からだけでは税を搾り取れないと思い、エヴォル商会に言いくるめられ、他国を自分のものにしようと考えた。
「ホント、クソな王様ね! 国民を何だと思ってるのよ!」
「ひ、ひぃぃぃ」
元政治家であるサリナはゴンザレス国王の甘い考えを卑下する。
俺も同じ意見ではあるが、一旦サリナの怒りは後に回してもらい、話を続けることにした。
エヴォル商会がゴンザレス国王に言った言葉を俺は復唱する。
「エヴォル商会はゴンザレス国王が国を治める王として素晴らしいと思い、今回の話を持って参りました。しかし魔王トールは力の無い者を王として認めないと言っており、残念ながらゴンザレス国王を認めてらっしゃらないのです。そこで提案です。『これ』を使って魔王トールに力を見せることにしませんか? もし上手くいけば、1つの国だけでなく、バラムの半分がゴンザレス国王の支配下になるかもしれませんよ」
エヴォル商会はそう言って、俺たちにゴンザレス国王を差し向けさせたのだ。
「何よそれ、嘘っぱちじゃない!?」
「そうなんだよ、俺はエヴォル商会なんて知らないし、会ってない。そもそも聞いたことすら無かったよ」
話を聞き、怒りで地団駄を踏むサリナ。そしてため息が出てしまうトール。
世界の平和を望んでいるというのに、こういうことを平気でするヤツがまだいることに、2人共やるせなさを感じていた。
「で、その『これを使って』って言ってた物って何よ?」
「ん、あぁ、それが1番厄介なんだった。これなんだけど、見てくれないか?」
俺はサリナにエヴォル商会がゴンザレス王国に持ち込んだ物を見せることにした。
「これは……トール、今すぐ役員を集めて話をしましょう! もしかしたら最近頻発してる出来事もこれのせいなんじゃないの!?」
サリナはゴンザレス国王が持っていたその例の物を見ると、急いでセントドグマに戻り、世界安全支配機構の役員全員で会議をした方がいいと提案する。
そして俺もその案にはかなり賛成である。
昔から起こっているとは噂には聞いていたが、ここ最近それは頻繁に起こっていて、色々と問題になっている。
『最近異世界からの転生者が多すぎる件!』
俺はゴンザレス国王から貰った『転生の書』を見て、ここ数ヶ月の騒がしい日々を思い出すのであった。
その中で最も印象深かった転生者『鬼屋椿』について考えた。
はじめましてゴシといいます。
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