第4話 肥えたゴンザレス王
何でこんな大事になっているんだ?
俺は今置かれている状況が理解できない。
さっきまでサリナと2人きりで言い争っていた、ゴンザレス王国の外壁正面入り口。
門が開き、ぞろぞろと人が出てきたな〜なんて思っている内に、俺とサリナは大勢のゴンザレス兵たちに囲まれてしまったのである。
「何、この状況?」
「何、じゃ無いわよ! 私たちをかなり警戒してるのよ! 見張りに気づいてたなら早くいいなさいよね!」
兵士たちに囲まれるその中央で、俺は怒り狂ったサリナに胸ぐらを掴まれ、大きく前後に揺らされる。
サリナは怒りながら状況を説明し、俺もそれで状況を理解できた。
そうか、魔王がいきなり来たからこんなに警戒してるのか。
勇者召喚してすぐに魔王が来たら、攻めて来たって勘違いもするわな。
失敗だったな、ゴンザレス王国に連絡しとけば良かったか。
話を聞きたいからそっち行っていいかって。
……いや、誰もゴンザレス王国の連絡先なんて知らないよな。
俺は話し合いに来ただけで、出来ることなら大事にしたくは無いのだ。
とりあえず、こっちの意思を伝えないと何も始まらないだろう。
周りを囲む集団の中で隊長かなって思った男に、俺は話しかけてみることにした。
「初めまして、俺の名……」
「何しに来た、魔王トール!」
挨拶から始めようとするが、食い気味に俺は名前を叫ばれる。
「そうなんだけど、俺は……」
「魔王が動くぞ、皆構えろ!」
ちょっと落ち着こうよと思い、まぁまぁという仕草を手でやったところ、その男は俺の言葉に聞く耳を持とうとせず、兵士たちに槍を構えろと大声で指示するのであった。
うーん、話を聞いてもらえなそうだな。
どうしたもんかな?
「う、う、うわぁぁぁ!」
緊張感が漂う中、俺が腕を組んで考えていると、槍を構えた兵士の1人が突如痺れを切らす。
他の兵士が待てと叫んでも、その兵士の耳には届かず、単独で俺に槍を向けながら走って来る。
そんなに怖いか、俺って?
暴力ってマジで好きじゃなないんだけど、しょうがない。
俺は向かって来る兵士の腹部を狙って『吹き荒れる風』を放つ。
その攻撃は兵士の腹部に見事直撃し、兵士は周りの兵士たちの元まで吹き飛んだ。
その後俺はもう一度『吹き荒れる風』を使い、周りを囲む兵士たちの足元をなぞるようにして、風で境界線を引く。
周りの兵士たちは驚き、今いる位置から少し遠のいていった。
「俺に攻撃させないでくれ。異世界から転生して来た勇者と話に来ただけなんだ。頼むから通してくれないか?」
戦闘の意思は無い、頼むから槍を収めてくれないかと、俺は兵士たちにお願いをする。
攻撃してきてなんだ! という兵士たちもいたが、さっき隊長と思った男が口を開く。
「わかった、手を出さないなら国王の元に連れて行くと約束する。ただ、荷物はこちらに預けてもらい、拘束はさせてもらう。そこは理解してくれ」
「わかった、話すだけだからな」
男の言葉に俺は合意する。
サリナは縛られるのは嫌と言っていたが、ここは我慢してもらい、俺とサリナは国王と会うため、ゴンザレス王宮へと連行されるのだった。
◇◇◇◇◇
荷物を預け、腕だけを縛られた状態で俺とサリナはゴンザレス国王と対面することになる。
俺たちは王宮内にある謁見の間に通された。
「ひどい国ね、ここ」
「……そうだな」
サリナが国のひどさを指摘するが、俺もそれには同意する。
ここに来るまでにゴンザレス王国の寂れた城下町を通って来たが、この部屋は、国の貧富の差が顕著に現れている。
部屋から溢れ出しそうなくらい、部屋の周りに並べられた、数多くの金銀財宝。
その下品に光り輝く宝の山はどこから来るのか。
街の様子を見ればわかる。
国民からの搾取がひどい国だというのが。
城下町で見た人たちは、目に見えて悲惨だった。
捨ててあるゴミ袋を漁る老人、汚い服で身売りをしている女性、路上でうずくまって元気に遊ぶこともしない子供たち。
ここに来るまでの道のりは、心を鷲掴みにされるような、とても痛いものであった。
「トール、大丈夫?」
「あぁ、悪い。ちょっと気分がな」
サリナは俺がピリピリしているのを察したのだろう。
手を握り、気持ちを落ち着けようとしてくれる。
勇者に会って話するだけの予定だったが、国の状況を見て、俺はゴンザレス王に文句を言ってやりたくなっていたのだ。
他国の王が口を挟むのはよくないと、昔、別の王に言われたっけな。
でも、多分俺の性格上、我慢は難しいと思う。
「サリナ、ごめん。もし俺がヤバいと思ったら止めてくれ」
俺はサリナに宣言しておく。
ゴンザレス王が思っているようなクズ人間なら、手が出かねないと。
サリナも俺の性格を知っていてくれてか、もしも手を出すことがあればギフトを使ってでも止めると言ってくれる。
普段はぼーっとしてる温厚なトール。
しかし、そんなトールにも許せないことはある。
父のような、人を救える医者に人になりたかったトールは、魔王になるにあたって1つ決めていることがあるのだ。
『手の届く範囲にいる弱った者を救えるような人間になりたい』
夢見た医者ではなく、何故か魔王になってしまったが、道は違っても人を救う仕事なんだと言い聞かせ、今は世界安全支配機構をやっているのだ。
力で人を変えるなんて事はしたく無い。
会話で終わるなら平和的で好ましい。
でももし、ゴンザレス王がトールの想像するような、国民から非道な搾取をする王なら、力づくでも改心させたいと思ってしまうのだ。
「待たせたな、魔王よ」
目のやり場に困る謁見の間に、ついにゴンザレス王が姿を現す。
ゴンザレス王を見た第一印象は肥えた豚ってカンジ。
美味しいものを食べてついたであろう贅肉たっぷりの見た目に、金色に光っていない場所を探すのが難しいぐらい、体のあちこちに装飾品をつけていた。
こんなヤツが良いヤツな筈がない。
俺は弱者から搾取している王という想像が、かなり確信に変わっていた。
姿を見た瞬間、ふざけるなと一発目から言いたくなったが、ここは冷静になって話そうと思う。
「お前、何しに来たんだ? もしかして、俺の申し出を受ける気になったか? だったら持って来てるはずだよな。なんで手ぶらなんだ?」
「申し出……持ってきてる? すいませんが何を言っているか?」
ゴンザレス王が話始める。
だが、初手から話がわからない。
コイツは何を言っているのだろう?
「あ? 前にお前の世界……支配……あぁ、何だったかな、お前の会社。とにかく俺に国を渡すって話はどうなったんだよ!」
話が見えてこず、困惑していると、ゴンザレス王は、またわからないことを言う。
はじめましてゴシといいます。
読んでいただきありがとうございます!
この話を読んで面白そうって少しでも思ってくださる方がいてくれると嬉しいです。
まだまだ話は続いて行きます。これからも更新して行きますのでブックマークの方もよろしくお願いします!
下の★★★★★を押して応援してくれると嬉しいです!
応援されてると思うとやる気めちゃ出てスラスラ書いちゃいます。
これからも愛読と応援のほどよろしくお願いします。