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第2話 ギフト

 パッキングを終えた俺は、魔王城の正門まで荷物を運び、サリナを待つことにする。


「あれ、トールお兄ちゃんだー!」


 門から出てすぐ、俺は声を掛けられる。

 俺をお兄ちゃんと呼ぶのは1人しかいない。


「ちゃんと仕事してるか〜、チャム?」


 声を掛けて来たのは部下の1人である、チャム・モレナだ。

 チャムは、門の外に設置された小さな箱部屋の窓から、顔をのぞかせる。


「してるよ! 今日も警備はバッチリであります!」


 チャムはそう言って、俺に向かって敬礼をする。


 14歳の少女であるチャムには、俺たちの拠点であるここ、『魔王城』の警備主任をしてもらっている。

 若くて元気な可愛らしい女の子のチャム。

 チャムのことをよく知らない魔王城の来客には「女の子に何をやらせてるんだ!」って、よく言われたもんだ。

 警備なんて仕事、ガタイのいい男にやらせろって。

 まぁ、確かにそう思うよな。

 でも俺は、チャムが魔王城の警備に適任だと思って、魔王城の門番をしてもらっているのだ。


「そうだ、お兄ちゃん。私ね、すごい事出来るようになったの! ちょっと見て欲しいの!」

「おっ、何だ?」


 チャムは俺に見て欲しいものがあると言って、部屋の中からお菓子の箱を取り出す。

 箱を振って、中でカラカラと音が鳴っているのを俺に聞かせてくる。


「んんん、はい!」


 チャムの両手が薄白く光る。

 そして、光が消えた後箱を振ってみると、さっきまで聞こえていた音が全く聞こえなくなったのだ。


「どお、すごい?」

「あぁ……かなりビックリしたぞ! すごいじゃないか、チャム!」


 俺はチャムを抱き抱え、チャムのやったことを高い高いしながら喜んだ。


「や、辞めてよお兄ちゃん。私もう14歳だよ! 子供じゃないよー!」

「そうですよ、トール。早くチャムを離して。パワハラの次はセクハラ。はぁ、これも法律改定案に入れないと」


 チャムをわっしょいしてるところに、準備を終えたサリナが来る。

 14歳の少女を抱き抱える俺を見るサリナの目は、とても冷たいものであった。

 上司に向ける目じゃないだろ! って言ってやりたかったが、サリナの言うことが正しいと思い、俺はすぐにチャムを降ろしてやるのだった。


「セクハラとか言うなよ。それよりさ、チャムがな、すげーんだ!」

「何よ、そんなにはしゃいで? まぁ、後で聞くわよ。とりあえずゴンザレス王国に行くのが先でしょ。チャム、この辺りなんだけど、頼めるかしら?」


 サリナは早く勇者の件を終わらせたいのか、俺の話はスルーして、チャムにバラムの世界地図を見せる。

 チャムはサリナが指差した位置の緯度と経度をしっかり確認し、大丈夫と言うのであった。

 それを聞き、俺とサリナは荷物を抱えて、チャムの前に立つ。


「2人とも準備いい? 位置は把握したけど、行ったこと無いからちゃんとイメージ出来ないの。だから、高さは気持ち上にする。もしもズレてたら自分たちで対処してね」

「任せて、後は全部トールが何とかするから」

「あぁ、任せ……って俺かよ!?」


 全面的に任せると言うサリナには文句があったが、チャムの説明を受けて、俺たちは了承する。


「じゃあ、いくね。『幸せを運ぶ鳥(トランスポート)』!」


 チャムの両手が薄白く光り、白い光が俺たちを包み込む。

 俺とサリナはチャムに転送され、魔王城を出発するのであった。



◇◇◇◇◇



 白い光の世界から、広大な青空に景色が変わる。

 俺とサリナは今、雲を突き抜け、空から大地に向かって急落下中。


「あらら、意外と高いな。うへぇ〜」

「何呑気に景色見てんのよ! は、早く何とかしなさいよ! ハラハラで裁くわよ!」


 地上から何メートル離れているのか、俺とサリナはだいぶ高い位置に転送されてしまったようだ。

 まだ地面に着くまで余裕がありそうだから、ゆっくり景色を眺めていたのだが、それをサリナは涙目で怒ってくる。


 ハラハラで裁くってなんだ?

 もしかしてハラハラハラスメントって意味か?

 コイツ、何でも『〜ハラスメント』って言えばいいと思ってないか?


「なぁ、ハラハラってもしかして……」

「そんなのいいから、早く、早ーく!」

「はいはいわかったよ。『吹き荒れる風(ブラスト)』!」


 俺は『吹き荒れる風(ブラスト)』を発動し、自分とサリナを風で包み込む。

 高速で落下していた俺たちは、急激に速度を落とし、ゆったりと地上へと降りていく。


「ヤダ、髪がボサボサ! もっと早く使ってよね!」

「文句言うなら自分でやれよ」

「私のはそんなギフトじゃ無いのよ! ねぇ、これが今使えるギフト?」

「ん、あぁ、そうだな。これ使いやすいんだよ。あ、そうだギフトで思い出した。あのな……」


 怒って文句を言うサリナをスルーして、俺は地面に着くまでの時間で、さっき門の前でチャムがやったことについて話をすることにした。


 『ギフト』

 5年前から突如使えるようになった特異な能力。

 異世界から転生してきたある男が、バラムに住む人々に、ランダムでギフトを与えたのだ。

 能力の強弱によって条件を課せられたりなどの制約はあるが、ギフトは選ばれた者に1つだけ、自分が思い描く能力を与えるという、かなりヤバい物だったのだ。


 ギフトにランダムで選ばれた中にいたのが、俺やサリナ、そしてチャムである。

 俺たちは自分で想像した能力をそれぞれ持っているのだ。


 チャムのギフトは『幸せを運ぶ鳥(トランスポート)

 触れたものを思った座標に瞬間移動させることができる能力だ。

 ギフトをもらった時、たまたま友達に届け物があったとかで、その能力を思いついたらしい。

 当時9歳だったチャムが想像した能力って考えたら、可愛らしいなと思えるギフトである。


 チャムのギフトは咄嗟とっさの思いつきで考えた物だが、実はチート級の性能を持つ。

 条件はあるものの、触れたものを好きな座標に飛ばすことが出来る『幸せを運ぶ鳥(トランスポート)』は攻撃にしても、防御にしても、かなりの汎用性はんようせいなのである。

 敵に触れて座標を高く設定してやれば、大概の人間は落下死をまぬがれ無い。

 攻撃されても触れた瞬間飛ばせるので、チャムを傷つけるより前に、その場から消えて無くなってしまう。


 わかったろ? チャムに魔王城の警備をさせてる理由が。

 チャムは若いから極力戦闘に参加させたくないが、会社の役員の中で、もしかしたらチャムが最強かもしれないのである。

 うちの社員であるから仕事はしてもらわないと、ということで魔王城の警備をしてもらっているのだ。

 あと、14歳に政治とか法律とかは、まだ難しくてわからないだろうしな。


 それに加えて、さっきやった箱の中身消し。

 直接触れなくても好きに飛ばせるようになったのだとしたら、下手すると俺の能力を上回るかもしれない。

 想像するだけで飛ばせるとかなら、防ぎ用が無いだろう。


「スゴイのね、チャムって。強くて可愛いなんて。あと胸があれば最強ね。まだそこは私の方が上〜」

「32にもなって何言ってんだ。それ、セクハラだぞ!」

「私はいいのよ。女だもん」

「せこいな〜」


 世界を任せてる法の番人が、自分を正当化するのを見て、俺たちは地上に到着するのであった。


はじめましてゴシといいます。

読んでいただきありがとうございます!

この話を読んで面白そうって少しでも思ってくださる方がいてくれると嬉しいです。

まだまだ話は続いて行きます。これからも更新して行きますのでブックマークの方もよろしくお願いします!


下の★★★★★を押して応援してくれると嬉しいです!

応援されてると思うとやる気めちゃ出てスラスラ書いちゃいます。

これからも愛読と応援のほどよろしくお願いします。

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