8-9 必滅の一撃
キメラと化したイリスが放つ魔力障壁が七色に輝くと、体の右半分からは業火が噴き出し、左半分からは絶対零度の吹雪が放たれる。その相反する二属性が渦を巻き、ライルたちを飲み込もうと迫る。
「……行くぞ、ライルッ!」
ビャクは二振りの『竜殺しの剣』を交差させ、大地を蹴った。
一太刀で炎を割り、二太刀で氷を砕く。ビャクは光速の演舞を繰り出し、異形の怪物へと化したイリスの肉体を刻んだ。
だが、イリスの傷口は即座に回復していく。
「少しはやるようだが、その程度の攻撃では私に致命傷を与えられんぞ」
イリスの背後から無数の雷鳴が降り注ぎ、同時に彼女の全身は竜の鱗に覆われていく。
次の瞬間、強固な鱗に包まれたイリスが凄まじい速さで突進した。その衝撃で大地は砕け、空気は引き裂かれる。
ライルはその突撃を正面から見据えた。
「……この全てを腐敗させる汚れを、お前にも味わわせてやる」
ビャクが左手の剣で雷を弾き、右手の大剣で猛烈な斬撃を放ってその突進を食い止める。
その刹那、ライルは折れた右腕を掲げた。突き出した骨の先から、呪いそのもののような濃密な『澱』が血と混じり溢れ出し、イリスが放つ『竜の魔力』を次々と腐食させていく。ライルはその『澱』の汚れで、イリスの再生能力を完全に封じ込めた。
その隙にビャクが竜の体を切り裂き、無数の斬撃を浴びせる。
二人の波状攻撃が、ついにイリスを神木の手前へと追い詰めていった。
「これで……終わりだッ!!」
ライルの叫びと共に、漆黒の『澱』と双剣の覇気が一つに共鳴し、世界の境界を真っ二つに断ち割る一撃が放たれた。それは、回復不能の必滅の一閃。
イリスはすべてを受け入れたかのように呟く。
「最初から、私には無理だったんだ……」
ライルはイリスの瞳に、ガルダスと同じ『信念に殉ずる色』を見た。
──必滅の一撃が、イリスを両断する。




