1-7 宝剣の少女
隠し部屋入り口の精巧な作りに感嘆し、ライルは、知っている人間でなければ辿り着けないだろうと、安堵感を覚えた。部屋はまるで魔術師の研究室のような造りで、巨大な水槽には生命力に満ち溢れたエメラルドグリーンの液体が静かに揺らめいていた。
ベッドには王女そっくりの少女が眠っておりその髪は宝石のように黄金色に輝いている。
「この子がリアナか」ライルは確信し呟く。
黒髪の少女はリアナを起こし靴を履かせようとしていた。
「どうしてすぐにここに逃げ込んまなかったんだ?」と、ライルは尋ねた。
「鐘を鳴らしていたの、村中に危険が迫っていることを知らせるために。」と、黒髪の少女は答えた。
少女の腰には、見たことのない異形の形状の剣が輝いていた。反りのついた刀身は、まるで月の光を浴びた銀色に輝いているようだった。見慣れない形状の剣は、まるで宝剣のような神々しさを放つ。
「あたしは戻るから早くリアナを連れいって」
少女の握りしめた拳は、並々ならぬ決意を示していた。
「戻るつもりだったのか?駄目だ、危なすぎる、一緒に逃げるんだ」ライルは少女の手首を掴み、無理やり連れて行こうとした。少女は必死に抵抗した。大人の力には敵わず、引きずられる。
次の瞬間、ライルは少女に投げ飛ばされ、天井と地面が逆さまになった。
ライルが起き上がろうとしていると、少女は振り返り言った。
「リアナを守ってあげて、あの子は記憶喪失なの、何も覚えていないの」そう言い残すと、少女は部屋を出て行った。
部屋の外からは、激しい打撃音と、剣がぶつかり合う金属音が響き渡り、建物の揺れが激しくなっていた。まるで嵐が屋敷を襲っているかのようだった。
ライルは黒髪の少女を追いかけ戻ろうと思ったが足を止めた。
(あのレベルの戦闘にはついて行けるのか…? 俺に少女を守れるのか…? それにリアナを1人にするわけにはいかない……)
建物の揺れは激しさを増し、隠し部屋の入り口側が崩落した。ライルは、このままではリアナが逃げ出せないと考え、奥の通路から村の外へと向かった。
背中ごしに轟音に掻き消されそうな会話が響く、
「剣が見つかったぞ、墓標がわりに墓地に………」