1-6 決別の剣
ライルは、両手を挙げて石像の陰から姿を現した。戦うつもりは毛頭なかったが、逃げることもできないと悟っていた。
剣士が剣を振りかざす。
ライルは、死を覚悟したのか、それとも無意識なのか、ふと呟くように言った。
「リアナを守ってくれ」剣士に向き直る。
「何だと!?」剣士は戸惑いつつも、斬撃から衝撃波が放たれ、ライルに向かって襲いかかる。
しかし、次の瞬間、衝撃波は何者かのバリアによって弾き返された。
そこに現れたのは、黒いフード付きのロングコートを羽織った人物。ヴァルトが着ていたものと全く同じデザインのコートだった。
その人物はしわがれた声で告げる
「ヴァルトに雇われた者だな」
声からすると、老練な魔法使いのようだ。
さらに、別の黒いフードを被った人物が現れた。
「別に助けなくてもいいだろう。」
若々しい声、それも女性のようだ。
フードの女性は続けて言う。
「それにターゲットも捕まえたぞ」右手には黒髪の少女の髪を掴んでいた。少女は髪を引っ張られ、顔をゆがめながらも、必死に抵抗していた。
「あの子は」ライルは小さく声を漏らした。
その子はなんとライルが襲った黒髪の少女だった。
また、剣士はフードの女性がリアナを狙っているのだと気づく。
「その子はお前たちの狙っている子じゃない、別人だ。離してやってくれ」剣士は懇願するように叫ぶ。
フードの女性は、にやりと笑う。
「あー、こいつはお前にとって人質になるのか」そしてライルに向かって命令する。
「こいっ」
フードの女性はライルに顔を向けた。
「まずはお前が竜に突っ込め」
「竜…?」ライルが首をかしげる。
「あの剣士の事だ」
ライルはため息まじりに思う。
(この女も自分を捨て駒にするつもりだ。)
ライルは耳打ちする素振りを見せ、女性に近づく。
直後、少女を掴んでいる腕ごと斬りつけた。
しかし、その女性は素早く少女を放し、なんとライルの斬撃を片腕で受け止めた。
「貴様、何をする!」と高らかに声を上げる。
次の瞬間、剣士が一瞬で距離を詰め、女性に蹴りを食らわせ、吹き飛ばした。
「お前たちは避難しろ」と剣士は告げ、少し戸惑いながらも、フードを被った2人に向き合った。
黒髪の少女は、ライルの手を掴む。
「こっち!」と声をかけ、教会へと走り出した。
ライルと少女は、薄暗い教会の中を駆け込む。無数の石像が並ぶ中、少女は壁の一箇所を指さし、囁いた。
「ここ!」
隠し部屋の扉を開けると、そこには小さな窓から光が差し込み、静かな空間が広がっていた。