表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/77

6-12 竜の腕

「……お前が踏みにじってきた命を、実験動物にされたイリーナを、受け入れられるわけないだろう!」


 高重力に押し潰されながら、ライルが血を吐くような叫びを上げた。その瞳には、燃えるような怒りが宿っている。


「大局を見ろ、間引きは滅亡を遅らせる効果がある、イリーナは魂を抜いている、ただの肉塊を有効活用してどこに問題があろうか」


 ガルダスは表情を変えず、手元のスイッチを再び操作した。


 ──カチリ。


 二人を縛り付けていた不可視の重圧が霧散する。


「かかってくるがいい、私より強ければ、滅亡を弾き返せる可能性が今よりはあるということだ。……お前たちが、このことわりを覆せるかどうか、私が検分してやろう」


 ガルダスは腰の剣を抜き両手を広げ構えた。


「……ヴァルト、行くぞ!」

「ああ……死んでも、あいつだけは道連れにしてやる!」


 ライルの剣が走り、ヴァルトが稲妻をまとって地を蹴る。

 だが、ガルダスは動かない。その不気味に発光する「魔眼」が、二人の生命の輝き、心音までもを完璧に捉えていた。


「見えるぞ……。筋肉と魔力の血流が」


 ガルダスは最小限の動きでライルの刺突をかわし、ヴァルトの左腕からの斬撃を軽くいなすと、そのまま重い漆黒のオーラを纏った剣をヴァルトの胸元に叩き込んだ。

 凄まじい衝撃。ヴァルトは壁まで吹き飛ばされ、激しく吐血して膝をつく。右腕を失い、バランスを欠いた身体では、ガルダスの絶技を捉えることさえ叶わない。


(……クソッ、全身竜化させるしかないのか……だが、右腕が無いこの状態でガルダスに対抗できるか?)


 視界がかすむヴァルトの目に入ったのは、それでも止まらず、ガルダスの暗黒のオーラに焼かれながらも剣を振り続けるライルの背中だった。


(……アイツを、一人にするわけにはいかない!)


 ヴァルトは目を剥き、体内の竜の血を無理やり逆流させた。膨大な魔力を、全身ではなく、失われた「右肩」の断面一点に集束させる。


(全身じゃない。一点だ……すべてをそこに凝縮しろ!)


 ヴァルトがガルダスのふところへと肉薄する。その瞬間、ヴァルトの右肩から黒い炎が噴き出した。骨を編み、肉を練り上げる爆発的な再生。漆黒の鱗に包まれた「腕」が、瞬く間に形成されていく。


「……何……?」


 ガルダスが初めて、その細い眼を見開いた。魔眼が捉えたのは、制御不能な怪物の膨張ではない。鋭利な爪を持ち、魔力の奔流をその内に閉じ込めた、静かなる「竜の義腕」だった。


「グレンの無念を……刻めッ!!」


 ヴァルトの右腕が閃く。かつての腕を遥かに凌ぐ密度と速度。その五指の鉤爪かぎづめが、ガルダスの防壁を切り裂き、その胸元へと深く斬り上げられた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ